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「国の借金が」に医療が壊される

府医ニュース

2019年7月3日 第2897号

 財務省は5月、国債や借入金などを合計した「国の借金」が平成30年 度末時点で約1100兆円になったと発表した。報道では国民一人あたり約874万円の借金を抱えている計算とのこと。一般国民の意識には「早く国の借金を返さねば」というイメージが刷り込まれたに違いない。そもそも、誰かの赤字は誰かの黒字、国の借金は国民の資産である。よって国の借金を人口で割りそれを一人ひとりの借金ということが無茶な理屈ではないか。更に付け加えるなら、日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産から負債を引いた対外純資産残高、つまり我が国の海外への債権は341兆円もある。言い換えれば、先程の国の借金と合わせて、国民一人には、政府と海外に約1100万円の債権があり、別に返済する義務はないのだ。
 加えて現在はデフレである。世界で20年以上もデフレ状態であるのは日本のみ。デフレ脱却を謳うならなぜインフレ政策を行わないのだろうか。そんな中、更に景気を冷やす恐れのある消費税増税が行われようとしている。経団連や連合など様々な業界団体は消費税増税に期待しているような向きがある。前回の消費税増税の際、内閣は大々的に「消費税率の引き上げ分は、全額、社会保障の充実と安定化に使われます」とポスターで訴えた。だが、社会保障の充実に使われたのは、3%の増税で増えた約8兆円の税収のうち16%だけ。そして、残りの84%が社会保障制度の安定に使われたかというとその実感は全くない。このことより、今回の増税分が医療費の財源アップに回されるかどうかは分からないのだ。
 以前から私は、目の前の患者や家族、地域住民の生活が破綻すれば医療の崩壊につながると訴えてきた。だが、富裕層ではない我々自身の生活も、消費税増税で脅かされていることを自覚しなくてはならない。よって、財政出動をデフレ期こそ訴え、それを医療と介護の現場にも回るよう働きかけていくべきだと私は思う。この当たり前のことを世間に訴えてくれる医師会であってほしい。(真)