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時の話題

医薬分業の現状と課題

府医ニュース

2019年6月26日 第2896号

今一度、原点に立ち返り、効果の検証を

 これまで政策誘導により医薬分業が推進されてきた。その利点として、使用したい医薬品が手元になくても、患者に必要な医薬品を医師・歯科医師が自由に処方できる。処方箋を患者に交付することにより、患者自身が服用している薬について知ることができる。「かかりつけ薬局」において薬歴管理を行うことにより、複数診療科受診による重複投薬、相互作用の有無の確認などができ、薬物療法の有効性・安全性が向上する。病院薬剤師の外来調剤業務が軽減することにより、病院薬剤師が行うべき入院患者に対する病棟活動が可能となる。薬の効果、副作用、用法などについて薬剤師が、処方した医師・歯科医師と連携して患者に説明(服薬指導)することにより、患者の薬に対する理解が深まり、調剤された薬を用法どおり服用することが期待でき、薬物療法の有効性、安全性が向上する――などが挙げられている(平成23年版厚生労働白書)。
 日本の医薬分業は、昭和26年「医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律」(いわゆる医薬分業法)の制定、31年4月施行により推進されることになった。しかし、しばらくは進まず、本格的な普及は49年の診療報酬改定での処方箋料の引き上げ以降とされている。
 院外の薬局で調剤を受けた割合である処方箋受取率(医薬分業率)は、地域・診療科格差(50数%~80数%)があるものの、全国平均は70%を超え、医薬分業は確実に進展しており、医療保険では調剤医療費における技術料が年間1.8兆円となっている。「患者のための薬局ビジョン」に基づき、地域包括ケアシステム構築に資する医療提供を行う一員として、かかりつけ薬剤師・薬局が進められているが、薬局は調剤業務を行うに留まり本来の機能を果たせておらず、患者や他職種から医薬分業の意義やメリットが実感されていないとの意見がある。
 そのような中、日医総研からワーキングペーパー「調剤報酬と医薬分業の現状――医科と調剤の関係に注目して」が公表され、現在の医薬分業について様々な問題点を指摘している。診療報酬本体は「医科:歯科:調剤=1:1.1:0.3」で配分されているが、医科では著しく技術の高度化が進んでおり、この配分を固定することは合理的でない。医科院内処方の評価は極めて低く、病院薬剤師の評価が全く不十分である。薬局の需給を調査した公的統計は存在せず、医療法では薬局も医療提供施設であるが、「医療施設調査」は病院、診療所だけが対象である。これまで医薬分業が進められてきたが、患者にとってメリットが感じられていない。診療報酬本体の各科配分の固定化を撤廃し、患者が真に必要とする医療に財源を優先すべきである――としている。医薬分業は、欧米諸国では日本より古くから制度化されており、追随するように日本の医薬分業率は進展し続けた。しかし、患者の利便性・安全性の向上、費用対効果など、医薬分業の本来の目的である患者本位の制度になっているのか、今一度、原点に立ち返り、検証が必要な時期に来ていると考える。