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医師・医療関係者のみなさまへ

茂松会長 4年目に向け展望語る

府医ニュース

2019年6月19日 第2895号

 平成28年6月23日に開催された第307回大阪府医師会定例代議員会終結後よりスタートした茂松茂人・府医執行部は、まもなく4年目を迎える。そこで、これまでの3年間にわたる会務運営を振り返るとともに、今後の抱負や喫緊の課題などについて、茂松会長に語ってもらった(聴き手・阪本栄理事)。

国民本位の医療提供体制を堅持

阪本:府医会長に就任して3年が経過します。まず、率直な感想をお聞かせください。
茂松:業務が多岐にわたる上に、その量も大変多く、行事に追われて動き回ったという印象です。大阪を離れることも多いですが、患者さんの声を直接聞くことが大切だと考え、時間をやり繰りして診療を行っております。
阪本:会務にあたって大事にしていることは何でしょうか。
茂松:会員の活動を支える、国民医療を守るということに重点を置いています。
阪本:これまでで印象に残っていることは何でしょうか。
茂松:会長就任後の2年間、日医の理事を務めたことで、全国の先生方の意見を聞き、様々な経験を積むことができました。

府医の担うべき役割

阪本:府医として担うべき役割をどのように考えておられますか。
茂松:郡市区等医師会がいかに円滑に活動できるかを念頭に、府医が見本となり、リードしていくことだと考えております。
阪本:府医を取り巻く現状や課題についてお教え下さい。
茂松:大阪では4月に行われた統一地方選挙で大阪維新の会が圧勝し、その体制がより盤石となりました。現在、大阪府知事・大阪市長ともに保健医療について話ができる関係を築いておりますので、府民が幸せになるかを判断基準に、是々非々で対応していきたいと考えております。

関連団体との関係

阪本:日医と府医の関係についてどのように考えておられますか。
茂松:国民皆保険制度を守るため、日医がリードし、都道府県医師会が支援することが大切です。医師の働き方改革や新専門医制度、医師確保計画など、様々な問題について議論が進められますが、府医は国民医療を守るため日医を支えていきたいと思います。
阪本:郡市区等医師会に期待することは何でしょうか。
茂松:地域包括ケアシステムにおいては、自治体とともに多職種との協力関係を築く中で地域の医師会の役割が重要になります。高齢者が急増していく中、在宅医療や認知症対応など、かかりつけ医には患者とのより深い関係が求められることから、住民の生活・健康・命を守るとの気持ちを持って活動していただけるよう、会員への積極的な働きかけを期待します。また、府医として全面的に支援していきたいと思います。
阪本:新研修医ウェルカムパーティーが今年度で7回を数えました。更に、2年間の臨床研修修了を労うとともに、次のステップに進まれるのを機に、改めて医師会の取り組みを紹介する機会としてウェルカムパーティーPartⅡを昨年度より開催しております。こうした組織強化の取り組みについてお聞かせください。
茂松:新医師臨床研修制度により、実質的に医局制度が崩壊することとなりました。研修先の自由化は、結果的に研修医が信頼のおける先輩を作りにくくし、相談できる相手がおらず不安を感じさせることが多くなったように感じます。そうした研修医の不安を少しでも解消するとともに医師会の組織力強化を図りたいとの考えで、ウェルカムパーティーおよびウェルカムパーティーPartⅡを開催しております。組織率向上を共通の課題とする大阪府医師協同組合・大阪府医師信用組合・府医が三位一体で取り組んでおり、こうした活動により将来を担う医師を支え、日本の医療の在り方や方向性などを伝えていきたいと考えています。

医療を取り巻く課題

阪本:医師の働き方改革、地域医療構想、医師需給・偏在対策など医療を取り巻く課題が山積しております。
茂松:医師の働き方改革に関しては、医師の健康と併せて地域医療を守ることが重要になります。この2つのバランスが大切であり、その上で医師の偏在対策などに取り組まねばなりません。しかしながら、国の議論では数の論理だけで開業に制限を加えようとするなど、医師を管理統制する方向性が感じられ大変危惧しています。医療を受けるにあたって国民が困ることのないよう、国民の視点で考えることが必要です。
阪本:医師の健康問題がいよいよ議論されるようになりましたが、現場に即したものでなければなりません。
茂松:現在の議論は医師の多い地域、少ない地域といった数字を合わせるだけという印象を受けます。医師の年齢構成や患者の流出入といった要素は考慮に入れているようですが、地域における交通の利便性や土地の広さなどの要素が考慮されておらず、国が算出した指標も科学的根拠に基づくものとは言えません。医療はサービス業ではなく数字だけで解決できるものではありません。世界でも比較的コストが低く、かつ平等に提供されている日本の医療を守るためには、国民に寄り添える気持ちを持った政治家に力を発揮していただくことが重要です。
阪本:医師偏在指標では充足とされている地域でも、そこに暮らす人々は「医師が不足している」と感じていることもあります。現場の意見を聞くことが重要です。
茂松:国がこうした検討をする時は、自分達の考えに合う人を集めて結論に結び付けようとしがちですが、そこに国民の視点を持ち込まねばなりません。

今後の展望

阪本:4年目に向けて、今後の展望をお聞かせください。
茂松:地域医療構想では、医療費を抑制したいという思惑を感じます。次は医師の偏在対策などを端緒に、医師の管理統制を狙ってくると思います。こうした動きを注視し、意見を述べて参ります。一方で、正論だけでは難しいこともあります。国民本位の医療提供体制を堅持するために医師会の主張を通すには、国民とともに運動する必要があります。
阪本:いかに立派なことを言ってもなかなか通らない。やはり医政が重要ですね。
茂松:大阪ではいわゆる都構想が大きな関心を集めています。都構想を巡って今後、様々な議論が重ねられると思いますが、そのメリット・デメリットを十分に検討し、住民が受ける医療がどうなるかをしっかりと考えていかねばなりません。賛成・反対の両側から検討することが府医に課せられています。また、日本医師連盟の代表として羽生田俊先生には政界で再びご活躍いただき、医師会を代表して意見を述べていただくことが重要です。国民皆保険制度をはじめとする日本の医療制度を守るために政治力は欠かせません。会員にもその重要性を一層認識していただけるよう努めて参りたいと考えています。3年間の経験を踏まえ、今後も会務に尽力して参りますので、会員の先生方には、引き続きご指導ご鞭撻の程お願い申し上げます。