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医師・医療関係者のみなさまへ

第138回エイジレス健康講座

府医ニュース

2019年6月5日 第2894号

睡眠環境整え「良眠」を

 大阪府医師会・ATCエイジレスセンター実行委員会主催による「エイジレス健康講座」が5月18日午後、ATCエイジレスセンター・セミナールームで開催された。第138回となる今回は「シニア世代の睡眠」をテーマに実施。近隣住民ら約30人が耳を傾けた。
 当日は、大阪精神科診療所協会からの推薦を得て、同会理事の安田究氏(やすだメンタルクリニック院長)が、「昼寝はしちゃダメ?――シニア世代の睡眠リズムと適切な睡眠時間について」と題して講演した。冒頭、睡眠の重要性に触れる中で、断眠実験を紹介。動物は、数日で衰弱し1~2週間で死に至ったとする一方、ヒトにおいては「2~3日間で自然に眠り込む」ことから、「不眠で死ぬことはない」と明言した。また、寝不足が命を縮めるとして話題となった「睡眠負債」に言及。▽単に長時間睡眠を取ることが良いことではない▽日本人の平均睡眠時間は世界で最も短いが、トップレベルの長寿である▽睡眠時間は加齢とともに減少する――などを挙げ、「自身に適した睡眠の必要性」を説いた。更に、睡眠には「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」があり、健康な成人では約90分~120分周期で繰り返すと指摘。一夜の睡眠のうち前半はノンレム睡眠、後半はレム睡眠が多くなるとした。その上で、良質な睡眠には、両者のバランスが大切であり、「睡眠時間が長すぎても短すぎても良くない」と述べた。

シニア世代には昼寝を推奨

 続いて、加齢による睡眠の変化として、①総睡眠時間・レム睡眠・ノンレム睡眠が減少②途中覚醒・早朝覚醒が増加③午睡の増加――を挙げ、それぞれを解説。24時間生体リズムがあいまいになり、睡眠時無呼吸症や泌尿器科的な問題による途中覚醒も増えることから、「午後の眠気が顕著になる」と述べた。安田氏はこうした変化を踏まえ、「シニアにはある程度の昼寝が推奨される」と強調。1~2時間、毎日決まった時間に昼寝することで夜間の良質な睡眠につながると加えた。その上で、シニア世代の健康な睡眠の取り方として、「昼寝」とともに「睡眠時間にこだわらない」「習慣的な寝酒は避ける」ことを促した。

睡眠薬の服用は主治医と相談を

 最後に、不眠症を解説する中で、「睡眠薬による治療は対症療法であり、服用を続けて治癒するものではない」と説明。不眠の原因となっている疾患の治療や睡眠環境を整えることが重要とした。一方で、「睡眠薬を過度に恐れる必要はない」と言及。主治医と相談しながら服薬し、「いつか中止する」との気持ちを持っていてほしいと結んだ。