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時の話題

医療保険関連法成立

府医ニュース

2019年6月5日 第2894号

マイナンバーカードを健康保険証として代用

 5月15日、医療保険関連法案(医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案)が、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。今回の法改正では、▽オンライン資格確認の導入▽オンライン資格確認や電子カルテ等の普及のための医療情報化支援基金の創設▽NDB、介護DB等の連結解析等▽高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施等▽被扶養者等の要件の見直し▽国民健康保険の資格管理の適正化▽審査支払機関の機能の強化――などが盛り込まれた。
 これにより、保険医療機関等で療養の給付等を受ける場合の被保険者資格の確認について、マイナンバーカードによるオンライン資格確認が導入される。また、導入に向けた医療機関・薬局の初期導入費用、国の指定する標準規格を用いて相互に連携可能な電子カルテシステム等を導入する医療機関での初期導入経費を補助するため医療情報化支援基金が創設される。そのほか、被保険者記号・番号を世帯単位に変えて個人単位(被保険者または被扶養者ごと)に定められる。
 具体的にはマイナンバーカードに搭載されたICチップを医療機関の窓口の読み取り機にかざすと、保険証の情報が医療機関に送信される。これにより、保険者を異動しても個々人として資格管理が可能になるとしている。加えて、プライバシー保護の観点から、健康保険事業とこれに関連する事務以外に、被保険者記号・番号の告知を要求することが制限される。つまり、健康保険事業とこれに関連する事務以外で、業として、被保険者記号・番号の告知を要求する、またはデータベースを構成することが制限されることになる。これらに違反した場合の勧告・命令、立入検査、罰則を設け、令和3年3月の導入を目指す。
 審査支払機関については、①支部長が担っている権限を本部に集約し、本部によるガバナンス強化。現行法上の支部の都道府県必置規定を廃止②職員によるレセプト点検業務の実施場所を全国10カ所程度の審査事務センター(仮称)に順次集約③審査委員会は、本部のもとに設置するが、地域医療の特性等を踏まえ、設置場所はこれまで同様、47都道府県とし、審査委員の審査補助業務は47の審査事務局で実施する。
 そのほか、本年4月に始まった新たな在留資格「特定技能」で働く外国人労働者が増加すると見込まれることなどから、健康保険の給付を受けることができる扶養家族を原則、国内居住者に限るとする規定が盛り込まれた。
 マイナンバーカードは、導入時には医療関連の機微な情報についての使用は見送られた。しかし、交付実績が平成30年12月時点で人口の12%にとどまっている現状がある。今回、様々な懸念材料を残しながらもマイナンバーカードに保険証の代用という機能を付加することになった。国はマイナンバーカードの更なる普及を目指すとしているが、今後、国による管理医療のツールにならないか注視する必要がある。