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医師・医療関係者のみなさまへ

医学部生に茂松会長が講義

府医ニュース

2019年6月5日 第2894号

 今後の我が国の医療を担う医学部生が、日本の医療制度および医師の業務についての理解を深められるよう、大阪府医師会の茂松茂人会長は大阪府内の大学医学部に出向き講義を行っている。今年度は、自身が昭和53年に卒業した大阪医科大学を皮切りに順次特別講義を予定。5月15日午後には、母校で第3学年約100人を対象にPBL(Problem Based Learning)講座を受け持った。

~大阪医大PBL講座~
医療制度と医師の業務を解説

 茂松会長は冒頭、高齢化や医学の進歩による社会保障費増大に対して国が抑制策を進めている現状に言及。患者が医療にかかりやすい体制、医師が医療を行いやすい体制の必要性を説いた上で、そうした体制づくりに医師会として取り組んでいると述べた。また、医療提供体制には経済や政治が大きく影響するとして、「政治力を持つことの重要性」を力説。日頃の授業では扱われることのない日本の医療の現状について学んでほしいと講義の趣旨を説明した。

社会保障充実こそが国民の不安を解消

 まず、日本の医療制度について解説。国民皆保険制度・現物給付・フリーアクセスを特徴として挙げ、先進諸国と比較しても医療のコストが低く、平等な医療サービスが提供されており、世界一の長寿国・低い乳児死亡率の実現に貢献しているとした。その一方、規制改革や混合診療、受診時定額負担などの社会保障費抑制策が進められ、国民の中では不安が増大していると危機感を表明。社会保障の充実こそが不安解消につながるとし、医師会が果たす役割を解説。かかりつけ医として、また、子どもの貧困への対応では学校医、所得・職業による貧困への対応では産業医としてなど、様々な場面での活躍が求められているとし、医師会活動の重要性を強調した。

国民に信頼される医師
患者の立場で医療を

 次に医師の業務について解説した。まず、日本医師会「医の倫理綱領」を紹介した後、医道審議会における行政処分事例を提示。国民に信頼される医師として患者の立場に立った医療を行うよう、臨床医としての心がけを説いた。また、応召義務や患者の同意、守秘義務といった医師として踏まえておくべき事項から、ACP(アドバンス・ケア・プランニング/愛称:人生会議)、異状死届出などの最新の話題まで幅広く解説した。

カルテの記載は診療報酬請求の根拠

 保険診療に関しては、「保険者と保険医療機関の公法上の契約」であるとし、保険診療のルールを守ることの重要性を力説。健康保険法、医療法、医師法、療養担当規則など、医療保険に関する法令を説明した上で、特定の保険薬局への誘導をはじめとする保険診療の禁止事項を例示した。更に、カルテ記載は診療報酬請求の根拠であるとしてその重要性を訴えるとともに診療内容や診療報酬請求に不当または不正の疑いがあれば指導・監査を受けることになると注意を促した。

地域住民とともに皆保険制度を守る

 最後に、今後、医師の裁量が狭められ、適切な医療が提供できなくなる可能性があるとの見通しについて解説した。医療制度の充実のため、医師会組織を強化して医療現場の声を集約し、患者のための医療を実現すべきと言及。医師・医師会がひとつとなり、国民医療の代弁者として地域住民とともに国民皆保険制度を守っていこうと呼びかけた。