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時事

集い・互い・知恵を出し合い プライスレス!?

府医ニュース

2019年4月3日 第2888号

「これからの地域づくり戦略」公表

 3月19日、厚生労働省の全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議において「これからの地域づくり戦略 1.0版」が公表された。
 3部構成の第1部「集い編:高齢者が集えば、地域が変わる」では、体操等の〝通いの場〟が、まちを変えると謳っている。身体を動かす身近な場所をたくさん用意することを掲げ、人集めには口コミなどの地道な活動とともに、ポイント付与や表彰などの仕掛けを勧めている。地域の実情に応じて、都心(ショッピングモール、カフェ等の民間のスペースを見つけて借りる)、中山間地域、積雪地、大規模団地の工夫例を挙げている。更に、人々の集まりは互助の基盤になるとして〝多世代交流〟や〝困りごと手助け〟の要素を加味した地域事例を紹介している。
 第2部「互い編:互助を見つける、互助を育む」では、買い物や移動支援、見守りなど地域の高齢者の暮らしを支える互助を手厚くするため、①既にある互助(ご近所づきあい、町内会、老人クラブなど)②制度を活用して生み出す新たな互助(生活支援コーディネーター・同協議体、介護支援ボランティア、認知症サポーター・チームオレンジ、認知症地域支援推進員、住まいの確保支援・生活支援)――を挙げている。
 第3部「知恵を出し合い編:多職種が知恵を出し合い、地域の課題を解決する」では、多職種の専門職が話すことで、思いもよらぬ支援とマッチングできるとして、「地域ケア会議」に関し、うまくいかない理由や改善策を論じている。生活課題全般への対応は、基礎的自治体である市町村の最も根源的な役割と位置付け、子育て、障害者、生活困窮者支援などに共通する手法であり、行き着くところは地域共生社会と謳っている。
 結びでは、基盤づくりのポイントに、①〝向く〟人材の配置:▽外部法人への委託ではなく市町村自らが行う▽担当課長や係長に〝向く人〟を〝長く〟置く(評価も長い目で行う)▽人間関係づくりを厭わず、行動力のある人、人の話をよく聞く人が向く――②地域の自主性・自律性③医療・介護の専門職(団体)との協力関係――を挙げている。
 そして【基本、ローコストでお金をかけずに取り組む】が、多少費用はかかるとして、活用可能な事業を紹介している。また、各地の様々な取り組み例とともに、第1・2部ではインセンティブ(介護保険の保険者機能強化推進交付金)の対象になることが示されている。
 高齢化が進み人手不足の時代が続く中、本人の力や住民相互の力を引き出して介護予防や日常生活支援を進めていくこと、ひいては地域づくりを進めることはとても重要である一方、現状は自治体により大きな差があるゆえ、本冊子には、首長や自治体とのコミュニケーションツール、取り組みのヒントとしての活用が期待されているという。ちなみに、会議で説明した担当局長は、「一番伝えたいのは、市町村長」と強調したと報じられているが、果たして、響くだろうか。
(学)