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時の話題
府医ニュース
2019年4月3日 第2888号
働き方改革では、様々な視点から労働者の健康を守る対策が罰則規定をもって行われる。今年4月からは、医師を除く医療機関の全職員への時間外労働上限規制が始まる。一般労働者の時間外労働時間の上限は、「年720時間以下」に規制するとされているが、医師については、「年1860時間以下」とする厚生労働省案が提示された。これは、地域医療の現状と医師の健康管理に配慮した、あくまでも2035年度までの時限措置とされている。
一般労働者と同様に、「年720時間以下」に時間外労働時間の上限規制を行うと、地域医療が激変し、崩壊の危機に瀕することが想定される。医師の健康管理より地域医療の維持に重きを置いた措置とも考えられる。労働基準法の理念、医師の健康を守る観点から、一日も早く一般労働者並みの上限規制にそろえることが望まれる。しかし、昨年取りまとめられた「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」の進捗状況についてのフォローアップ調査では、医療現場での努力にもかかわらず医師の労働環境の改善は遅々として進んでいない実態が明らかとなった。
産業保健の推進により、労働者の長時間労働の見える化等の労務管理で、労働環境は改善されているが、医師については、健康管理の視点での根本的な対策は長年行われてこなかった。現在、高齢化等に伴う医療需要の増加、医療の進歩・高度化、国民の医療に対する期待・要求水準の高まりなどにより、医師に要求される業務は増え続けている。このような状況下、「医師の働き方改革」の掛け声の下、ようやく医師の業務の現状把握・課題の抽出、成すべき対策の議論がスタートした。早急に医師の労働環境の改善が求められるが、医療機関では長年の医療費抑制策、消費増税による控除対象外消費税の負担などの影響で、有効な対策を講じることは困難な状況が続いている。
我が国の高齢者人口は、今後も増加すると見込まれているが、42年にはピークを迎え、その後、高齢化率は上昇傾向にあるものの減少に転じると推計されている。一方、医師の需要推計については、医学部定員を現状の9419人(18年度)とし、労働時間を週60時間程度に制限した場合、28年頃に均衡するとされている。つまり、「将来の医療需要は減少」し、「医師も過剰となる」との推測である。
2月27日に開催された「第29回医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会」において、第4次中間取りまとめが公表された。この取りまとめを受け、19年度に各都道府県で医師確保計画を作成することになる。今後、医師の働き方改革についての議論が活発化し、適宜修正が加えられるものと思われるが、実効性あるものとするには、その原資をどこに求めるのかがひとつの大きなカギになると考えられる。