TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

拡大鏡

府医ニュース

2019年2月27日 第2884号

◆本年1月、万引きを繰り返した女性に対して、クレプトマニア(窃盗症)という精神疾患が認定される判決が高知地裁であった。常習累犯ではなく、衝動制御の障害が原因として量刑の軽い窃盗罪が適用された。
◆しかし、この司法の先行的判断には課題がある。クレプトマニアのような罪になる精神疾患に対する社会での認知、医療診断の正確性や信頼性、再犯防止のための治療体制確立などである。
◆昨年、WHOで性的な感情や行動の制御ができない精神疾患として強迫的性行動症が新たに認められたが、診断基準はまだ確立していない。今後、様々な犯罪と精神疾患との関連性の研究が進み、更に認定対象が増えるかもしれない。今世間を騒がす理不尽な虐待やあおり運転殺人でさえあり得る。
◆犯罪がたとえ病と関連するとしても罪は罪である。治療も罪を償う中で行われるべきであり、被害者感情や社会不安が払拭されない限り、犯罪行為の免責事由になってはならない。改めて、現代社会の病の処方箋について考えておく必要がある。(誠)