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大阪府警察医会学術講演会

府医ニュース

2019年2月27日 第2884号

損傷大きな遺体の解剖 留意点など解説

 大阪府警察医会(竹中秀裕会長)は2月2日午後、大阪市内のホテルで学術講演会・新年懇親会を開催した。開会あいさつで竹中会長は、大阪府死因調査等協議会での意見の取りまとめを受け、対応が進みつつあると紹介。このうち、▽研修会の実施▽CT(死亡時画像診断)車の導入▽検案サポート医体制――は、警察医の活動に大きく関与するとして、その成果に期待を込めた。
 続いて、「大阪府内における死因調査体制整備の今後の取り組みについて」と題し、岡本潤・大阪府健康医療部保健医療室保健医療企画課主査が登壇。竹中会長が触れた死因診断体制にかかる取り組みを具体的に示した。研修会の開催にあたっては、背景に全検案数の約3割が医療機関を経由していることや、在宅医療の増加を指摘。大阪府医師会が事業を受託し、今年度より「救急医のための死因診断研修会」「在宅療養における看取り等研修会」を実施していると述べた。CTに関しては、大阪市内と府内の一部を対象に次年度より導入するとした。また、「検案サポート医体制」では、希望する警察医が監察医の検案に同行。死因診断の技法等の習得、検案レベルの向上を図ることを目的に事業を展開すると説明した。
 赤根敦・関西医科大学法医学教室教授は、「損傷の著しい遺体の司法解剖所見」をテーマに講演した。生前・死後の状況に関し、生前の損傷では心臓が動いており、血管の破綻部からの出血で軟凝血が生じるが、死後の損壊においては軟凝血が含まれないとした。一方、血液循環が瞬間的に停止する致命傷で死亡した場合、致命傷とほぼ同時に生じた損傷に出血が認められず、死後の損傷と誤る可能性があると述べた。その上で、国鉄総裁が轢断死体で発見された「下山事件」や、同大学での解剖事例を挙げて詳しく解説。損傷の著しい遺体では、それぞれの損傷を分類して成因を考察し、致命傷を絞り込むこと、更に、現場での詳細な情報を参照することが重要であるとまとめた。
 終了後には新年懇親会が行われた。宮川松剛・府医理事は、自身も大阪府死因調査等協議会に参画し、死因調査体制が在るべき方向性に収斂されたことを評価した。その後、公務で出席が叶わなかった茂松茂人・府医会長のあいさつを代読。日常診療に加えて、法医学に関する研鑚を積み、死体検案のほか、警察職員および留置人の健康管理に努める警察医に改めて敬意を表した。