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医師・医療関係者のみなさまへ

第51回若年者心疾患・生活習慣病対策協議会総会

府医ニュース

2019年2月27日 第2884号

小児の健全な育成「医学」から検討

 若年者心疾患・生活習慣病対策協議会(北村惣一郎協議会長/以下、若心協)の第51回総会が1月27日、大阪府医師会館で開かれた。本総会は輪番で開催され、今回は茂松茂人会長が同協議会総会長に就任。日本医師会、大阪府・市・堺市教育委員会の後援を受け、医師・学校関係者ら約300人が参集した。食育や心臓検診、救急対応などのワークショップ・講演が実施され、学校保健に関する理解を深めた。

総会の意義に期待

横倉日医会長、松井大阪府知事
吉村大阪市長、竹山堺市長が祝辞

 森口久子理事による総合司会で、最初に北村協議会長が登壇。関係者へ謝辞を述べた。あわせて同協議会の目的は「次世代を担う子どもの健全な育成」と言及。生活習慣病予防には幼児期からの対策が必要として、本総会での活発な議論を促した。次いで、茂松総会長がプログラムを詳説。学校現場は「社会の縮図」と指摘し、現場での課題共有が大切であり、若心協の活動が全国に広がるよう力を込めた。
 横倉義武・日医会長は、「生活習慣病予防には学校保健が果たす役割が大きい」とし、その取り組みに期待を寄せた。松井一郎・大阪府知事は万博開催に触れ、「『いのち輝く未来社会』のモデルとして内外に示したい」と吐露。出席者らに一層の協力を要請した。吉村洋文・大阪市長は児童虐待防止対策など、府医との連携をアピール。また若心協の活動は地域保健の活性化につながるとの見方を示し、更なる発展を望んだ。竹山修身・堺市長は健康と福祉に積極的に取り組んでいると強調。食育も含め、「医師会と協力して進めたい」と結んだ。次期開催地を代表し、安田健二・石川県医師会長は、伝統・風情のある地を生かし、若心協の更なる深化に努めたいと締めくくった。
 特別講演Ⅰでは益田元子氏(府医学校医部会副部会長)・髙屋淳二氏(同部会生活習慣病対策委員会委員長)が座長を務め、佐々木敏氏(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻疫学保健学講座社会予防疫学分野教授)が、「小児栄養疫学研究の勧め――未来の生活習慣病予防に資する科学的根拠をどのように構築すべきか」と題して講演。幼児・小児の食習慣と生活習慣病の関連についての疫学研究が乏しいことが課題と捉え、適切な調査の実施が求められるとした。特別講演Ⅱでは澤芳樹副会長が「小児重症心不全外科治療のFuturability」として、心臓移植や補助人工心臓など、心臓血管外科における治療の変遷を説明。「自己骨格筋芽細胞シート移植」やiPS細胞の導入などに触れ、小児の治療が広がるとの見解を示した。
 そのほか、小垣滋豊氏(府医学校医部会心臓疾患対策委員会委員)が座長となり、篠原徹氏(同委員)が、「学校心臓検診――残されている問題点を考える」と題して教育講演を行った。篠原氏は検診の問題点を列挙する中で、検診機関を選定する際の入札では、「価格だけで選ぶのは危険」と指摘。専門性・経験を有する医師が学校心臓検診に参加してほしいと促した。
 最後に道永麻里・日医常任理事が総括。若心協の活動の意義は大きいとし、全国展開に力を添えたいとした。中尾正俊副会長は、「1年以上かけて準備したことが実を結んだ」と語り、第51回となる総会が閉会した。

一般演題
学校でのAED症例に学ぶ

 山田修氏(府医学校医部会心臓疾患対策委員会委員)・松下享氏(同)が座長を務め、「学校でのAED症例に学ぶ」として、髙田のり氏(近畿大学医学部附属病院小児科助教)が、1度はAEDで救命できたものの、退院翌日に死亡した例を紹介。一次救命処置(BLS)の指導やAED装着が重要とした。次いで寺口正之氏(府医学校医部会心臓疾患対策委員会委員)が、プールの授業後に心肺停止した児童が迅速なAED装着で救命できた事例を報告。吉田葉子氏(大阪市立総合医療センター小児不整脈科副部長)は、当該児童の転院先での経過等を詳説した。その上で、学校での心停止では「不整脈疾患も多い」と指摘。後遺症なく回復するためには、心室細動発症後の迅速な胸骨圧迫・AEDが不可欠とまとめた。
 続いて、村上洋介氏(府医学校医部会心臓疾患対策委員会委員長)が、「大阪府内における学校心臓検診の実態と突然死およびAEDを含む心肺蘇生に関する調査」と題して講演。大阪府内の全小・中・高等学校1858校と44教育委員会を対象に行った、▽学校心臓検診の実態▽突然死・心肺蘇生例――に関する調査結果から現状を分析した。その中では、公立学校が二次検診まで実施する割合が85%と高値である一方、私立学校では75%が一次までの集団検診であったことなどが示された。

ワークショップ
特別支援の現場から食育を考える

 東野博彦氏(府医学校医部会生活習慣病対策委員会委員)・福井浩平氏(大阪府立高槻支援学校長)が座長を務め、3題の講演を実施。指定発言では髙谷竜三氏(同委員会委員)が、「支援学校では、低身長児の肥満が散見される」と指摘。「肥満度の数値にとらわれ過ぎるのは良くない」との見解を示した。

子ども達の食事情――ぼくと偏食と給食と

村山 聡 氏(大阪府立高槻支援学校首席)

 ASD(Autism Spectrum Disorder/自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)をはじめとする児童生徒の特殊な食べ方の背景に感覚異常を示唆。実態を把握しながら、情報共有に努めたいと述べた。

枚方支援学校の食に関する課題と取り組み

原 章子 氏(同枚方支援学校栄養教諭)

 給食は「授業時間」と位置付け、数字や言葉の学習の時間にあてていると報告。また、課題として偏食を挙げ、▽栽培活動など食材に触れる機会を設ける▽調理法を工夫する――などの取り組みを紹介した。

大阪府立支援学校における「体位調査」と「食習慣アンケート」についての報告

久保 美陽 氏(同東淀川支援学校栄養教諭)

 大阪府立支援学校栄養教諭研究会で実施した「体位調査」「食習慣アンケート」から見えた課題や展望を報告。痩身・肥満傾向の出現率が高く朝食内容の改善が必要と述べ、啓発活動が重要と説いた。