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時事

働き方改革

府医ニュース

2019年2月20日 第2883号

2000時間克服への希望

 厚生労働省は全国厚生労働関係部局長会議で、医師の時間外労働時間の上限として年間960時間・月100時間(例外あり)と、医療機関を特定し暫定的に許可する「地域医療確保暫定特例水準」を年間1900~2000時間とする案を、医師の働き方改革に関する検討会で提示したことを報告した。「2000時間」は驚きを通り越して唖然とした感覚をもって諸団体から受け止められたが、2016年の調査では時間外労働が1920時間以上の勤務医は約2万人おり、これを踏まえると実体を反映したものであると言える。横倉義武・日本医師会長は、すべての医師に暫定特例水準で働くことを強いるものではないと述べている。また、働き方改革によってフリーアクセスが著しく制限されることなどで、国民皆保険制度崩壊への警鐘も鳴らし、医師の働き方にかかる新制度が施行される5年後までに、上限時間の見直し、地域医療への影響の継続的な検証、経過措置の検討などを行い、地域医師会や各医療機関が協力して暫定特例水準を解決することとした。
 24年をデッドラインとして、25年以降、我々がどのような制度を作っていくかであるが、同検討会で吉田学・医政局長は、地域医療構想に基づいた体制整備と医師の地域偏在解消、そして働き方改革が関連し、絡み合っていることを強調している。この5年間に大きな体制変換を提示することが医師会には求められているが、5年間でできなかった場合、更に5年間の猶予を要求するのであろうか。または、厚労省が新しい政策を出すのであろうか。しかし、5年後に厚労省が全体改革を提示したところで、新医師臨床研修医制度のような大混乱を再び起こすことを誰が否定できるであろうか。特に、医師会は現在、管理医療制度に断固反対しているが、5年後に掌を返すがごとく、新しい国家管理制度に自ら進んで取り組むとは思えない。それに向こう5年間の蓄積は無視できない。
 政策導入のよい部分がある。例えば、道路拡張などでは、そこに道路を建設すれば明らかに街として発展するといった都市計画に基づき行われる。しかし、国を強くするためには、国家介入の割合は100%にしてはいけないのである。かといって100%国家の介入がないデメリットがある。そうであるならば、「5年」という期限を区切り、上限時間の見直しなどを解決できなかった病院群に限って、罰則規定ではなく厚労省の強い指導があるというのも、構想の実現として厚労省の方法論を試行する機会でもある。
 強い指導という形態をとることは、案外、医師偏在や過重労働、地域医療構想改革への特効薬になる可能性がある。かつての国鉄や専売公社、電信電話公社のような全体管理ではなく、働き方改革を厚労省なりのアイデアで、改革が未完の部分を完成することは、新医師臨床研修医制度のような一斉かつ全体改革の問題を回避できる。改革に成功した病院群はその周辺の医療機関を含め、自ら最高効率を発揮した結果であるから変更する必要もなく、その手法も十分参考になるであろう。強い指導という方向性は、地域医療崩壊への不安を持つ付近住民への配慮や、医師が法律を犯す罪悪感から解放し、5年間の建設的改革に邁進させることができる。できなければ部分的指導もやむを得ずで、多くの病院ではそれを回避すべく真剣に改革に取り組む姿勢が生まれる。法律を盾にした敵対的関係ではなく、官民ともに協力して目指す働き方改革であることを強く印象づける必要がある。
(晴)