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医師・医療関係者のみなさまへ

在宅医療における個別疾患研修会(第1回)

府医ニュース

2019年2月20日 第2883号

知識深めチームで支える

 大阪府在宅医療総合支援事業の一環として、大阪府医師会は「在宅医療における個別疾患研修会」を1月28日午後、府医会館で開催した。本研修会は、郡市区等医師会担当役員のほか在宅医療推進コーディネータや在宅医療・介護に関わる多職種などを対象に実施。今回は深刻な増加が予測される「心不全」を取り上げ、在宅療養に必要な知識を研鑽した。今後も、呼吸不全やACPなどをテーマに研修を継続する。

サポート体制の構築が大切

 当日は真嶋敏光氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員)が座長を務め、最初に中尾正俊副会長があいさつ。在宅療養を継続するためには、適切な医療とともに、介護職が「医療的マインドを持って介護サービスを提供することが必要」との見方を示した。その上で、心不全はがん診療と同様に「緩和ケアが必要な疾患」と位置付け、病態への理解を求め、「多職種が連携することが重要」と述べた。
 続いて、宮崎俊一氏(近畿大学医学部循環器内科学主任教授/大阪府済生会富田林病院長)が、「心不全って何?」と題して講演した。まず、心不全はイメージがしにくい疾患であることから、平成29年に日本循環器学会および日本心不全学会が一般向けに「心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり生命を縮める病気」と定義したと説明。心臓の機能を改めて解説するとともに、▽心不全時の血行動態▽左心不全の症状▽右心不全における徴候――などを示した。また、学会の定義にある「心臓が悪い」という状態に触れ、「弁膜症」「虚血性心疾患」「心筋の病気」を把握しておくことが重要とした。次いで、心不全の進展ステージを4段階(別掲)に分けて予防や治療法などを説明。高血圧や糖尿病、動脈硬化等は心不全のリスク因子であり、「根本治療が大事になる」と加えた。結びにあたり、「慢性心不全は長期にわたって寛解と増悪を繰り返すことが多い」と強調。経過の中で、可能な限りの予防・治療とあわせて、「多職種によるサポート体制を地域で構築することが求められる」と述べた。
 次いで、藏垣信子氏(訪問看護ステーションありく管理者/訪問看護認定看護師)が登壇。「在宅療養される心不全利用者への訪問看護ステーションからの関わり」と題し、2つの症例を交えて心不全患者への対応を語った。最初の例では、訪問看護の介入により患者の食事や活動量の管理が把握でき、適切なタイミングで医療機関への受診が可能になったと紹介。2例目では原因不明の愁訴があり、精神科へつなぐことで好転したことを報告した。藏垣氏は、訪問看護によって患者のQOL向上が期待できると言及。「時々入院、安心して在宅」を目標に、正しい知識を持って「チームの一員として患者を支えたい」と締めくくった。

心不全の進展ステージ

ステージA:器質的心疾患のないリスクステージ
 リスク因子はあるが器質的心疾患・心不全徴候がない
ステージB:器質的心疾患のあるリスクステージ
 器質的心疾患を有するが、心不全徴候は見られない
ステージC:心不全ステージ
 器質的心疾患を有し、心不全徴候を有する
ステージD:治療抵抗性心不全ステージ
 年間2回以上の心不全入院を繰り返し、治療等がなされたにもかかわらず、ニューヨーク心臓協会「心機能分類Ⅲ度」より改善しない