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時事

成年後見制度における診断書書式が改定

府医ニュース

2019年2月6日 第2882号

本人の意思を尊重した支援につながるか

 1月13日、成年後見制度における診断書が見直され、4月から書式の改定が行われることが報じられた。今後、最高裁判所が関係府省と連携して、医師・福祉関係者向けガイドラインを作成し、周知を図る予定とされている。
 成年後見制度の利用の促進に関する法律(2016年5月施行)に基づく、5年間を想定した成年後見制度利用促進基本計画では、①利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善:財産管理のみならず、意思決定支援・身上保護も重視した適切な後見人の選任・交代、診断書の在り方の検討②権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり③不正防止の徹底と利用しやすさとの調和:後見制度支援信託に並立・代替する新たな方策の検討――が柱に掲げられ、工程表が作成されていた。
 診断書改定のポイントは、▽判断能力についての意見欄において、意思決定支援の考え方を踏まえ「〝支援を受けて〟契約等を理解・判断できるか」に表現を改め、選択する4項目の並び順を「できる」→「できない」として従前と逆転▽判定の根拠を明確化するため、見当識、意思疎通、理解力・判断力、記憶力について障害の有無等を記載する欄を新設(都道府県により書式が異なるため、東京などでは既に同様の欄を導入済み)▽福祉関係者が本人の生活状況等を医師に伝えるための「本人情報シート」を新たに作成――となっている。
 背景には、00年の制度創設以来、成年後見の3類型(後見、保佐、補助)において、「後見」とされる比率が一貫して圧倒的に高い(直近の17年では78.6%)ことが挙げられている。判断能力に関して、「補助」が〝不十分〟、「保佐」が〝著しく不十分〟であるのに対し、「後見」は〝常にない〟とされ、成年後見人は日用品の購入以外のすべての法律行為について代理権を有する。逆から見ると、本人の権利が著しく制限され、意思が尊重されにくいことから、制度利用が伸び悩んでいる一因と指摘されている。実際に、本人や支援者の意見を無視した処遇が、一部で社会問題化している。今回の診断書書式改定により、より日常の生活状況を踏まえた判定となることが期待されている。
 ちなみに成年後見人は家庭裁判所が選任するが、申立人が希望する人が選任されるとは限らず、不服申し立てはできない。本人との関係は当初、親族が90.9%、弁護士や司法書士等の第三者が9.1%であったが、12年に逆転、17年では親族26.2%、第三者73.8%となり、更に差が開く傾向にある。
 促進基本計画に基づく施策の推進は、新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)にも取り入れられ、成年後見制度の検討や利用は、認知症の早期発見のメリットとしても強調されている。制度の理解やより良い運用・活用への意識が、かかりつけ医にも求められている。
(学)