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時の話題

医学部の地域枠

府医ニュース

2019年1月30日 第2881号

実効性ある見直しが急がれる

 国は「医師が増えれば医療費が増大する」との考えから、長く医学部の定員を制限してきた。しかし、地方を中心に医師不足が深刻化していることから、例外的に地域枠での医学部定員の増員を2008年度から認めてきた。
 医師の地域偏在による地方の医師不足の大きな要因として、04年度からの新臨床研修制度の導入が指摘されている。長年、主に大学医局が医師の勤務先などの調整機能を担っていたが、新制度により医師が自由に研修先を選べるようになったことから地域偏在が顕著となり、地方を中心に医師不足が深刻化した。その対策として始まったのが医学部入試の地域枠である。地域枠の募集人員は、08年度には403人(33大学)であったが、17年度には全医学部定員の18%の1674人(71大学)と、当初の4倍に増加している。
 地域枠学生の選抜方式には、一般枠と別枠の募集定員を設ける「別枠方式」と、一般枠等と共通で選抜し、事前または事後に地域枠学生を募集する「手挙げ方式」とに大別される。更に「別枠方式」は、一般枠に先行して選抜する「先行型」と、一般枠等とは区別して選抜する「区別型」に区分される。「手挙げ方式」については、選抜に先立って地域枠の希望を募る「事前型」と入学後に地域枠の希望を募る「事後型」がある。地域枠は、現在全都道府県に広がっているが、医師不足が特に深刻な北海道、東北地方の医学部で定員に占める地域枠の割合が高く、地方における医師確保の頼みの綱となっている。
 18年11月28日、厚生労働省と文部科学省は、今年度の医学部入試で地域枠の入学者が定員より187人少ない827人に留まり、33大学で定員を満たしていないとの調査結果を公表した。また、調査では「別枠方式」は、募集数の91%に奨学金貸与実績(確保率)があり、義務年限(卒後9年相当)の推定履行率は95%(20年度以降の医学部の臨時定員増関連)とされた。一方、「手挙げ方式」の確保率は79%に留まり、同推定履行率も86%となっていた。
 今回の調査から、地域枠として定員増が認められた部分を一般枠に振り替えていたことが明らかとなった。本来、地域で活躍する医師を確保する目的の地域枠が、単に定員増に利用されていたことになる。医師の絶対数は確実に増えており、医学部の定員も21年度まで現行の定員数が維持されると見通されている。実効性のある対策を早急に講じなければ、ますます若い医師が都市部に集中し、地域偏在が解消されず、むしろ助長されるのではと懸念される。