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在宅療養における看取り等研修会

府医ニュース

2019年1月30日 第2881号

多死社会を見据え検案能力向上

 在宅療養における看取り等研修会が平成30年12月18日午後、大阪府医師会館で行われた。これは大阪府在宅医療総合支援事業として府医が本年度より受託しているもので、既に8月23日に実施(本紙第2868号/9月19日付で既報)している。今回は大阪市内ブロック向けに研修会を開催。医師会役員、在宅医療・介護連携担当医師、警察医・監察医ら約100人が聴講した。

かかりつけ医の役割重要に

 当日は馬渕洋一氏(大阪府警察医会副会長)が座長を務め、はじめに宮川松剛理事があいさつ。本事業の趣旨を説明する中で、大阪市では独居高齢者の増加に伴い、死後に救急搬送の依頼があるケースが散見されるとし、「大きな課題」との見方を示した。あわせて、その人らしい最期を迎えることも大切だと指摘。かかりつけ医や救急医療現場などが力を合わせていくことが重要であり、そのためにも「本研修会を継続して開催していきたい」と述べた。
 引き続き、山崎隆司氏(大阪府健康医療部保健医療室保健医療企画課)が、「大阪府における死因調査体制の整備に向けて」と題して講演。大阪府内の死亡者数等の現状と推計値を示し、2025年には▽75歳以上の高齢者数は約150万人となり10年間で1.48倍に増加▽同単身高齢者数は約40万6千世帯で同じく1.43倍となる――と述べ、「これに対応できる体制の構築が急務」とした。また、大阪府における死因調査の現状を説明。27年の全死亡者数の14.9%にあたる1万2412件が「異状死(うち大阪市内は4756件)」とされ、犯罪の疑いがない・低い事例が、監察医や警察医により検案されていると明かした。その上で、超高齢社会に向けた死因調査体制の確立が重要と言及。府民への啓発も含め、更なる充実に向けて協力を要請した。

在宅医療時における 死後診察のポイント

 次いで、松本博志氏(大阪大学大学院医学系研究科・医学部法医学教室教授)が登壇。「在宅医療における死因診断について――死後診察とは」と題して、死後診察の意義や留意点などを解説した。松本氏は今後の多死社会を見据え、「在宅死亡における死因診断」の重要性に言及。厚生労働省『情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン(29年9月)』に看護師による死後診察補助として明記された内容から、所見取りの手法を詳しく解説した。特に、死亡確認を2回行うことを筆頭に、▽うっ血や損傷、死後硬直など▽頭部・頸部の索痕▽眼球・鼻腔・口腔内の出血や内容物――などを観察し、事件との関連性を判断してほしいと注意を促した。更に、循環・呼吸の停止や構造の崩壊により起こる「死体現象」に触れ、それらが発生する機序などを説示。在宅で死亡確認をした際に、家族からの話との整合性をとるよう求めた。その上で、多死社会へ対応するためには、検案能力の向上が重要と結んだ。

死後診察 厚労省ガイドラインに規定

 厚生労働省『情報通信機器(ICT)を用いた死亡診断等の取扱いについて(29年9月)』の中で「死亡後改めて診察を行うこと」と定義した。また、同ガイドラインでは、「一定の要件を満たす」場合、看護師による死後診察補助が可能となり、医師が「対面での死後診察」によらず死亡診断書を交付できることとされた。
 ガイドラインでは「死後診察」の内容を明記。死亡の事実の確認として、死の3徴候とされる①心停止②呼吸停止③対光反射の消失――を5分以上の感覚をあけて2回実施するほか、外表検査の項目が詳しく規定された。