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府医ニュース

2019年1月16日 第2880号

 ◆新年にはおせち料理。農耕民族ゆえんの品々。一方、焼肉もたっぷり楽しんだ諸兄が多いかと。人は肉食動物の枠内との考えもある。
 ◆旧石器時代、日本人はナウマンゾウやヘラジカの肉を主食としていた。たった1万年前に農耕が始まる。飛鳥時代に、仏教伝来で殺生禁止が広まる。その後も、肉食禁止令がたびたび出る。だが、サクラ(馬)モミジ(鹿)ボタン(猪)の隠語で肉食が続いた。
 ◆近年、狩猟で得た肉を用いてのジビエ料理が注目されている。狩猟免許新規登録者も増加傾向と。しかし、「有害動物駆除」という旗印には疑問を感じる。古くは、神の山(自然)に入り、与えられた貴重な肉で命をつなげた。農耕(人)が有害鳥獣としたのだ。
 ◆医療の進歩は、命の在り方を変えてきている。結果、「益」と「害」の境界が揺れている。ことに、終末期にあっては益と害が複雑に入り組み、かつ入れ替わる。古くからの「害を与えない」という医療の旗印の本質を常に考えねばならぬ。有害鳥獣なるものを生み出さない。(翔)