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関西医大・大阪市大で茂松会長が特別講義

府医ニュース

2018年12月5日 第2876号

日本の医療制度と医師の在り方示す

 茂松茂人・大阪府医師会長は11月8日午後、関西医科大学に出向き、第2学年を対象とした講義「総合人間医学『医学概論2』」において、「日本の医療制度と医師の業務」をテーマに、現状の課題や医師としての向き合い方などを語りかけた。また、11月22日夕刻には、同テーマで医学部生や教職員を対象に、大阪市立大学学舎で特別講義を行った。

 関西医科大学での講義では、まず、保険診療を行う際に重要な関連法令として、健康保険法や医療法、医師法、薬事法等を概説。留意すべき点に加え、罰則を伴うような禁則事項もあり、「知らなかったでは済まされない」と注意を呼びかけた。また、保険診療から逸脱すると指導・監査が行われるとし、その種類や対象などを示した。更に、日本の医療の特徴として、▽国民皆保険制度▽現物支給▽フリーアクセス――などを紹介。国民は安全で公平な医療を低負担で受けることができ、世界トップクラスの長寿や低い乳児死亡率の実現につながっているとした。一方で、日本は成熟社会となり「大きな経済成長が見込めない」と言及。こうした中でも経済優先の施策や社会保障費抑制が進められていることは遺憾であるとの見解を示した。最後に、医師会の様々な役割を紹介。医療・介護などに関する国民の様々な不安を解消するため、社会保障の充実に向けて国や行政に働きかけていると述べた。

大阪市大でも熱弁 企業の内部留保 給与への還元を

 11月22日の講義では、冒頭、荒川哲男・大阪市立大学学長があいさつ。医師会は医育機関および学術分野の団体とともに、医療・医師を支える組織のひとつと言及。国民に平等な医療を提供するため、国民皆保険制度を堅持し、より良い医療体制の構築に努めているとした。今回の特別講義では、普段の授業では聞くことができない医療制度を中心に、医師として重要な事項を学んでほしいと述べた。
 その後、茂松会長が「日本の医療制度と医師の業務」と題して登壇した。はじめに、国民に必要な医療を適切に提供する上での法的な位置付けなどを説明。保険診療の概要や指導・監査などに関して、事例も含めて紹介した。また、我が国の医療の特徴として国民皆保険体制・現物給付・フリーアクセスを列挙。これにより、比較的低コストで平等な医療が提供され、世界トップクラスの長寿を誇っていると語った。一方で、高齢化が進んでいるにもかかわらず、医療への財源投入が少ない状況を憂慮。病床数や在院日数の削減など、国の医療費抑制策に苦言を呈した。また、混合診療について改めて解説。先進医療に関し、安全性や有効性が確認された後に保険収載され、すべての国民が享受できることが求められるとした。更に、医療事故調査制度のほか、医の倫理や臨床医としての心がけなど、医師としての姿勢にも触れた。
 最後に、「社会保障と経済成長」をテーマに話題を提供。企業の内部留保を給与に還元し、経済の活性化につなげるとともに、社会保障の充実による国民不安の解消を訴えた。茂松会長は、国民の視点に立った医療政策が実現されるよう、引き続き尽力していくと述べ、理解と協力を重ねて要請した。