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医師・医療関係者のみなさまへ

第57回 十四大都市医師会連絡協議会

府医ニュース

2018年11月21日 第2874号

地域医療体制の充実図る

 政令指定都市医師会などで構成される十四大都市医師会連絡協議会が10月27日・28日、仙台市医師会の主務で開催された。3つの分科会をはじめ特別講演なども企画され、都市部における医師会の在り方を討議した。
 開会式では永井幸夫・仙台市医師会長があいさつ。本協議会は、「都市部が抱える様々な医療課題」を協議する貴重な機会であり、今後も継続して活動する意義を強く訴え、分科会での積極的な議論を呼びかけた。

第1分科会
在宅医療

 平成30年4月には、「在宅医療・介護連携推進事業」(27年に開始)の実施主体が市町村となり、また、診療報酬・介護報酬の同時改定が行われた。このような状況下で実施されてきた各医師会の取り組みや、現在の課題に関して情報提供がなされた後、ディスカッションを実施した。
 大阪府医師会からは、前川たかし理事が小児在宅医療について発表。小児の医療的ケア検討委員会や、大阪府委託事業として行っている「小児在宅医療同行訪問研修」「小児在宅医療研修会」のほか、大阪市が実施する「重症心身障がい児者の医療コーディネート事業」に協力していると報告した。加えて、在宅医療を必要とする子どもと家族にとって、大阪が住みやすい場所となるための支援体制構築に向けた「大阪小児在宅医療を考える会」が実施されており、府医も協力した上で来年1月に開催予定と紹介した。
 質疑応答では、看取りに関する話題から死体検案書の取り扱いが議論となり、各医師会における対応について、意見を交わした。

第2分科会
終末期医療(人生の最終段階における医療)

 人生の最終段階を自宅や施設で過ごす人が増える中、30年3月に厚生労働省が「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(改訂版)を公表し、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の考え方が取り入れられた。こうした現状を踏まえ、各医師会の状況や取り組みに関する調査結果が報告されたほか、計画等への問題提起、事前指示書作成や市民への啓発、具体的な方針などが示された。
 府医からは、栗山隆信理事が、27年に大阪府訪問看護ステーション協会を通じ実施した調査結果を紹介。患者の今後を主治医と話し合っていない方が半数以上を占め、また、インターネットによる府民調査では、ACPを「知らない」「よく分らない」との回答が9割と紹介した。ディスカッションでは、事前指示書や蘇生の中止について意見交換。人生の最終段階やACPを考える上では、国民的な議論が必要であり、その実践には多職種連携が不可欠との認識が多く見られた。

第3分科会
災害医療

 今回、新しい取り組みとして、災害医療シミュレーション研修(体験型)として災害医療訓練が行われた。
 19年10月に「十四大都市医師会災害時における相互支援に関する協定書」が締結され、東日本大震災で初めて発動。災害時の支援活動が本格的に動いた。一方で、被災地の保健医療に係る様々な調整(コーディネート)は整備されつつあるものの、市区町村や二次医療圏における体制は十分とは言い難い。このため、▽災害時の保健医療コーディネートの目的▽コーディネート体制における政令市や医師会の立場▽政令市における保健医療調整の在り方――などについて理解を深めることを目的に訓練を実施。午前は相互支援を確認・検討し、午後は「長町利府断層帯」による地震を想定して、被災状況の評価および対応方針、支援の終了時期など、具体的な対応を協議した。加えて、協定書に基づく医療救護やJMATとの関連性、医師会(事務局含む)の支援策等に関して意見を交換。府医からは鍬方安行理事が、災害時における地域包括ケアシステムの可能性に言及した。

全体会議(2日目)
中川・日医副会長および川島・東北大教授が講演

 10月28日の全体会議では、各分科会の座長より議論の総括が行われた。その後、中川俊男・日本医師会副会長が「最近の医療情勢とその課題」と題し、診療報酬の特例の解釈と課題について講演。はじめに、医療費適正化計画と診療報酬に関し、▽都道府県医療費適正化計画は「保険者協議会で協議する」と法律に明記▽保険者協議会の構成員として医師会の参加が設置要領に定められた▽医療費適正化計画の実績評価を行った結果、必要と認められる時に、厚生労働大臣が都道府県と協議した上で、特例を定めることができる(高齢者の医療の確保に関する法律14条)――と説明。しかし、「高確法13条(診療報酬に係る意見の提出等)および14条を一連のものとして、厚労大臣へ診療報酬に係る意見を提出し、大臣がそれを認定するものと解釈されている向きがある」と述べた。その上で、国会の答弁を示しながら、これらが別個のものであると確認できると指摘。奈良県の事例は、▽13条・14条を一連のものとした▽保険者協議会を軽視した▽県内体制の脆弱化に対する認識がなかった――ことなどが発端となった問題であるとし、現在は解決に向かっていると報告した。なお、これらに関する都道府県医師会の役割として、1.保険者協議会の構成員として参画する2.診療報酬の特例は厳格な手続きが設定されているため、保険者協議会で議論を尽くす――が重要と繰り返し訴えた。
 続いて、川島隆太氏(東北大学加齢医学研究所長・教授)が、「スマート・エイジング――脳を知り、認知症を予防する」と題して講演した。加齢を否定的に捉えるアンチ・エイジングに代えて、「スマート・エイジング」という考え方を提唱。認知機能について詳しく解説し、トレーニングを行うことで大脳皮質が増加すると述べ、高齢者や学生への取り組みを紹介した。