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医師・医療関係者のみなさまへ

IPPNW大阪府支部講演会

府医ニュース

2018年11月7日 第2873号

健康リスク見越した支援体制を

 核戦争防止国際医師会議(International Physicians for the Prevention of Nuclear War/IPPNW)は10月11日午後、大阪府医師会館で講演会を開催。放射線の遺伝的影響やそこから派生する問題などが示され、約20人が聴講した。
 当日は、安田正幸・IPPNW大阪府支部長が座長を務め、振津かつみ氏(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所特任研究員)が、「放射線の遺伝的影響と核被害者次世代の人権」と題して講演を行った。振津氏は放射線の遺伝的影響調査のためのマウス実験を紹介。高度の放射線を照射後の世代は、「腫瘍が発生しやすい体質」を引き継いでいく可能性があるとし、「ヒトでも同様の事象が起こり得る」との見解を示した。一方で、すべてのマウスに遺伝的体質が受け継がれるわけではないが、「リスクの高い群は一定程度存在する」と指摘。被ばく者に対しては、医療的サポートや支援体制を継続することが重要とした。
 また、原子爆弾被爆者や原発事故被害者などの追跡調査にも言及。「リスクの増加を表す証拠は得られていない」とする報告に対しては、▽疫学調査の対象集団が少ない▽遺伝的影響を検出するための生物学的指標が適切ではない▽生殖細胞の被ばく時期による感受性の問題――など、調査の科学的問題や限界があるとを示した。その上で、遺伝的リスクを否定するのではなく、それらを見越した支援体制が重要と改めて強調。人権にも配慮しながら、慎重な対応が求められると結んだ。
 講演後には聴講者から放射線に対する様々な質問がなされ、振津氏が丁寧に応じた。