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日本の医療も売られる

府医ニュース

2018年11月7日 第2873号

 先日発売されたジャーナリスト・堤未果氏の「日本が売られる」を読んだ。書店で手にしたときは、諸外国の観光客に日本のものが爆買いされる様子が書かれていると思った。だが、同書には、日本の法律が次々と変えられ、国家によって市場化してはいけないものが「民営化」という名の値札をつけられ、バーゲンセールされている様子が書かれていたのだ。
 昨今話題になっている「働き方改革」。勤務医はじめ、看護師への労働環境の改善は確かに急務である。しかし、言葉の意味と実態がかけ離れている同法案には注意が必要である。高度プロフェッショナル制度(高プロ)に代表されるように、労働者が、企業にとって自由に安く働かせられるようにしたものと分かるからだ。高プロの対象職種や対象年収はこれから決められるとのこと。医療法人の株式会社参入の話もあるので、医療職は絶対に無関係ではない。
 ほかには、水道民営化、カジノ、公教育改革などが登場するが、これらは大阪で積極的に推進されていることを知ってほしい。大阪市営地下鉄が既に民営化されていることが示しているように、大阪での改革のアクセルはベタ踏み状態。医療の民営化も当然、大阪が最先端となる可能性がある。
 あと書きには故宇沢弘文先生が登場する。宇沢先生が提唱する社会的共通資本に値札をつけられては、医療職のみならず国民は安心して暮らせない。一見、無関係と思われる患者の家族背景(高齢者のみ世帯、独居など)や財産、家族の労働条件などは、社会的共通資本を守ることによって安定する。我々医療者は医療のことだけを考え国民の幸福を考えてはならない。国民が安心して生活出来てこそ、我々も安定した医療が提供できるのだ。その基盤(社会的共通資本)を守らねばならないという当たり前のことを医師会員の皆さんと共有したい。(真)