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時事

平成29年度健保組合決算見込公表

府医ニュース

2018年11月7日 第2873号

保険料収入増を上回る拠出金負担の増加

 健康保険組合連合会(健保連)は9月25日、3月末現在の1394組合(被保険者数1651万人)から提供されたデータに基づき、平成29年度決算見込状況を集計した結果を公表した。
 29年度の経常収支は、経常収入8兆1999億円、経常支出8兆653億円、経常収支差引額は1346億円の黒字となった。経常収支は、前年度に比べ1030億円黒字が減少(4割減少)したが、これは被保険者数や賞与の増加、保険料率の引き上げなどにより、保険料収入が2368億円増加したものの、後期高齢者支援金が全面総報酬割に拡大されるなど拠出金の増加により、収入の増加を支出の増加が上回ったためである。
 拠出金総額は3兆5265億円で、前年度比2446億円、7.45%増加した。そのうち後期高齢者支援金は1兆8324億円(前年度比9.10%増)、前期高齢者納付金は1兆5942億円(同6.34%増)、退職者給付拠出金は999億円(同3.20%減)となった。後期高齢者支援金は、後期高齢者数の増加に加え、3分の2総報酬割から全面総報酬割に拡大された影響で、前期高齢者納付金は団塊世代による人員増や27年度精算分が追徴となったことで増加した。一方、退職者給付拠出金は、27年度から退職被保険者の新規適用がなく退職被保険者数減により減少した。なお、被保険者1人当たり負担額は21万3560円で、前年度比1万712円の増加となった。
 赤字組合は580組合で、41.61%の組合が赤字の状況である。平均保険料率(30年2月末)は9.167%(調整保険料率含む)で、前年度比0.057ポイント増加した。9%以上の組合は908組合と全組合の65.1%を占めるが、5.5%未満の組合は5組合、5.5%以上9%未満の組合は481組合で、9%未満の組合も34.9%ある。なお、協会けんぽの平均保険料率(10.0%)以上の組合は314組合で、22.5%を占めているが、10.0%超の組合は175組合で12.6%である。料率を引き上げた組合は、204組合(全組合の14.6%)で、平均引き上げ料率は0.664%である。一方、料率を引き下げた組合は、102組合(同7.3%)で、平均引き下げ料率は0.432%であり、組合による格差がかなり認められる。29年4月以降に解散した12組合の平均保険料率は10.403%(最高12.089%、最低9.000%)であり、10組合が10%以上であった。
 一方、30年度の協会けんぽの保険料率(3月分から改定)は最低が新潟県の9.63%、最高が佐賀県の10.61%、大阪府は10.17%で、昨年より0.04%引き上げとなっている。
 健保組合・健保連は、主張「2025年度に向けた医療・医療保険制度改革について」の3つの柱である▽高齢者医療費の負担構造改革▽医療費の伸びの抑制▽健康な高齢者を増やすための保健事業の強化――の実現のため、政府等への働きかけを継続するとともに、国民や世論にも理解が深まるよう活動を展開していくとしている。医師会もこれらのデータに基づく健保連の主張を真摯に受け止め、更なるデータ収集等に基づいて、改革案を提言し、議論を深めていくことが必要である。(中)