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医師・医療関係者のみなさまへ

シルバー健康大学

府医ニュース

2018年10月17日 第2871号

人生と向き合うために

 大阪府医師会は府民向けイベント「シルバー健康大学」を9月20日午後、府医会館で開いた。本催しは、中高年の府民にいつまでも健やかな生活を過ごしてもらいたいと企画。毎年、様々なテーマの講演と簡単な体操指導を行っている。第48回となる今回は、約180人が参加した。

「人生の最終段階」の過ごし方
家族・親しい人と話し合おう

 冒頭、阪本栄理事はあいさつで、日本の平均寿命は男性・女性ともに世界トップレベルにあると胸を張った。その上で、健やかに自立した生活を送る「健康寿命」の延伸には、日頃から心の健康を保ち、適度な運動を継続することが効果的であると強調。今回の講演と体操を健康づくりに役立ててほしいと述べた。
 続いて、佐々木惠雲氏(藍野大学短期大学部学長/医学博士)が「終活時代の生き方、死に方――医師、僧侶の視点から」と題して講演した。社会の急激な変化に伴い、近年、特に都市部では地域や家族とのつながりが希薄化し、「死の個人化」が進んでいると指摘。いわゆる「終活」や葬送の変化に加え、「家族や周囲に迷惑をかけたくない」との意識が根強く、自分自身の最期ではPPK(ピンピンコロリ)を望む人が増えているとした。一方で、会場では、「家族や友人の場合は、それを望まない」とする意見が多いことが示された。
 更に、自身の経験を基に、医師・僧侶の視点から死の捉え方を披歴。医師が患者の臨終に立ち会う場合は、「死=肉体の死」であり、患者の家族が納得し、満足できればと考えていたと説明。しかし、家族や親しい人の死――いわゆる「二人称の死」を受け入れ、納得することは非常に難しいと語った。また、仏教(僧侶)の立場から見ると、人の死には「肉体の死」だけでなく、「関係性の死」の視点があるとの見解を提示。それまで存在した人間関係は断たれても、「亡き人(死者)は残された者(生者)の心に深くかかわり、強い影響力を及ぼす」と述べた。その上で、故人との関係性を保持している「死の関係性」や、「二人称の死」と真剣に向き合うことが、自分自身の生や死、そして人生と向き合うことにつながると説いた。
 最後に、年齢を重ねて、自分自身の死を意識し始める際には、「死の関係性」の側面も含め、「多角的な視点」で捉えてもらいたいと呼びかけた。あわせて、人生の最終段階をどのように過ごしたいのかを日頃から自問するとともに、家族や親しい人と話し合う機会を持ってほしいとまとめた。

動ける100歳目指す
健康体操でイキイキと

 講演後には、吉中康子氏(京都学園大学経済経営学部経営学科特任教授)が「楽しく動いて、体操を常備薬に!――ビタミン体操で動ける100歳をめざそう!」をテーマに、恒例の健康体操を指導した。吉中氏は、「体操はこころとからだのビタミン剤」との持論を述べ、健康に「動ける100歳」を迎えてほしいと語りかけた。その後、参加者は音楽に合わせて体を動かし、「ビタミン体操」を体験。"常備薬"を処方され、場内には歓声が沸き、笑顔があふれた。