TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

時事

診療報酬は在宅医療を推進するか

府医ニュース

2018年10月3日 第2870号

平成30年度改定を検証

 政府が進める在宅医療の体制整備が遅れている。全国の4分の1にあたる452市町村で、「在宅療養支援診療所・病院(在支診・病)」と呼ばれる在宅医療の中核を担う施設が1カ所もない。同じような症状の治療で医療費を比較すると、在宅は入院の3分の1にとどまるとの調査もある。「人生の最終段階を自宅などで過ごしたい」と希望する人が6割にのぼり、患者の生活の質への観点でも、在宅医療のニーズは高いにもかかわらず、在宅医療の担い手が増えないのはなぜであろうか。
 平成30年度診療報酬改定においても、往診料は720点に据え置かれ、「患者または家族等患者の看護等に当たる者が、保険医療機関に対し電話等で直接往診を求め、当該保険医療機関の医師が往診の必要性を認めた場合に、可及的速やかに患家に赴き診療を行った場合に算定できるものであり、定期的ないし計画的に患家または他の保険医療機関に赴いて診療を行った場合には算定できない」と厳格化された。ただし、同一の患家において、2人以上の患者を診療した場合は、2人目以降の患者については往診料等を算定せず、初診料または再診料等のみを算定する。すなわち、1人目は往診料の算定が認められている。一方、在宅患者訪問診療料は1人を診察した場合には833点の算定であり、同居する同一世帯の複数の患者に対して診療をした場合は、「往診料」と同様に1人目は「同一建物居住者以外の場合」833点を算定し、2人目以降の患者については初診料または再診料等を算定することができる。しかし、これ以外では2人以上の同一建物居住者に対して同一日に訪問診療を行う場合には、患者1人につき所定点数は203点となる。患者1人の在宅患者訪問診療料が、1人のみを診療する時に比べて4分の1以下になることが適切であろうか。ちなみに、看護師等による在宅患者訪問看護・指導料は、同一日に1人の場合と2人の場合は1人につき580点と変わらない。3人以上で1人につき293点と減額されるが、2人以上の訪問件数では在宅患者訪問診療料より高点数となっており、問題点を指摘する意見が多い。
 在宅患者訪問診療料2の新設は、在宅医療のレベル向上のみならず、在宅医療に取り組む医師の看取りを含めた負担軽減につながることにより、入院医療の受け皿となり得る高レベルの在宅医療が普及することが期待される。しかし、当該患者につき、訪問診療を開始した日の属する月から起算して6カ月(別に厚生労働大臣が定める疾病等の患者に対する場合を除く)を限度として、月1回に限り算定するとの制限は不十分な医療につながるため、改善が必要と考える。
 また、在宅時医学総合管理料(在総管)等における単一建物診療患者が1人の場合、2人以上9人以下の場合、それ以上の場合の点数の差異は、患者一人ひとりに対する「管理料」としては不合理であり、同点数とすべきではないだろうか。更に、「在総管」と「施設入居時等医学総合管理料」の点数の差異も改善すべきであり、核家族化が進む現状では、施設に医療依存度の高い患者の受け入れを求める必要があると思われる。「別に厚労大臣が定める状態の患者」に対する点数設定や包括的支援加算等による評価を更に高めるべきと考える。
 在宅医療を推進するためには、現場の状況を十分に見据えた診療報酬の改定が必要と考える。(中)