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近医連定時委員総会

府医ニュース

2018年10月3日 第2870号

地域別診療報酬特例の撤廃など3項目を決議

 近畿医師会連合(今期委員長=広岡孝雄・奈良県医師会長)は9月9日、奈良市内のホテルで平成30年度定時委員総会を開催。午前には常任委員会のほか、「医療保険・介護保険」「地域医療」「生涯教育」の3分科会を開き、近畿2府4県の医師会が意見を交わした(分科会概要は3面に掲載)。
 定時委員総会に先立って、来年4月27日から29日に名古屋市で開催される「第30回日本医学会総会2019中部」について、齋藤英彦会頭(名古屋大学名誉教授)が登壇し、趣旨を説明。事前参加登録を含め、多数の参加を呼びかけた。
 引き続き、安東範明副委員長(奈良県医師会副会長)が委員総会の開会を宣言し、広岡委員長があいさつ。奈良県では地域別診療報酬の議論は避けて通れない状況にあるが、「近医連の決議をもって、態度を明確にしたい」と力説。医療機関および患者の平等な権利が担保されるべきであり、特例の活用によって「県内の医療機関が閉鎖に追い込まれてはならない」と訴えた。また、本件に関しては多くの賛同を得た上で、絶対反対という立場で取り組むと決意を語った。次いで、前期主務地医師会長として越智眞一監事(滋賀県医師会長)が登壇。同県医師会長を務めた故猪飼剛氏の遺志を継ぎ、近医連主務地の務めを終えることができたと報告した。また、日本医師会役員選挙では、近医連推薦候補者がすべて当選したことに謝意を表すとともに、各役員の更なる活躍に期待を寄せた。
 その後、今期の役員選任を報告。委員長には広岡・奈良県医師会長、副委員長に寺下浩彰・和歌山県医師会長および安東・奈良県医師会副会長、常任委員に茂松茂人・大阪府医師会長と空地顕一・兵庫県医師会長、監事に松井道宣・京都府医師会長ならびに越智・滋賀県医師会長が就任した。任期は来年6月30日まで。
 続いて、横倉義武・日医会長、荒井正吾・奈良県知事(林修一郎・奈良県福祉医療部長兼医療政策局長代読)、仲川元庸・奈良市長(向井政彦・奈良市副市長代読)より祝辞が述べられた。横倉・日医会長は、度重なる自然災害を憂慮する一方、JMAT活動への協力に謝意を表した。また、役員改選で、松原謙二副会長(府医理事)、城守国斗常任理事(京都府医師会副会長)のほか、理事として越智氏と空地氏、監事として広岡氏が日医執行部に参画したことに触れ、「良い意味でフレッシュな顔ぶれがそろった」と言及。次の時代につなげられる陣容になったと胸を張った。また、横倉・日医会長は、少子高齢化が進行する中で、社会保障制度の安定性・持続性を堅持することが課題と指摘。人生100年時代を見据えた医療の在り方を提言していく必要があるとし、かかりつけ医が地域包括ケアシステムの中心となることが求められると加えた。そのほか、地域別診療報酬や医師の働き方改革などに対し、日医の見解および方向性を説明。各地の問題を把握し、「政府に働きかけることが日医の役割」と述べ、一層の支援・協力を要請した。
 以降は、広岡委員長が議長を務めて進行。滋賀県医師会より前年度の活動報告がなされた後、29年度歳入歳出決算、30年度事業計画および歳入歳出予算が提案され審議。いずれも拍手多数で承認された。最後に、▽地域別診療報酬特例の撤廃▽適切な医療提供体制を確保するための地域医療構想の展開と新専門医制度の確立▽控除対象外消費税問題の抜本的な解決――を求める決議(別掲)が採択された。


                 決 議

 近年の急速な少子高齢化や社会経済情勢の変化にともない、政府は財政健全化を理由に、社会保障費を抑制しようとしている。
 「骨太の方針2018」でも、さらなる患者負担増を強いる取り組みや、地域別診療報酬の活用に関する提言が盛り込まれている。
 わが国の医療制度は長年にわたって全国どこでも均一、かつ良質な医療を一律の診療単価で提供してきた。地域別診療報酬が導入されるようなことになれば、医療の格差や質の低下を招くことになり、断固として容認することはできない。医療費の抑制は、国民の健康増進にかかる政策の結果として達成すべきものである。
 すべての国民が将来にわたり、安心、安全な医療を平等に受けることができるよう、適切な医療保険制度ならびに医療提供体制を維持、発展させる必要がある。
 以上のことから、政府に次の事項を強く要望する。



                記
一、地域別診療報酬特例の撤廃
一、適切な医療提供体制を確保するための地域医療構想の展開と新専門医制度の確立
一、控除対象外消費税問題の抜本的な解決

以上、決議する。

                    平成30年9月9日

                    近畿医師会連合定時委員総会

特別講演で「医療倫理と法」を解説

 広岡委員長が座長を務め、樋口範雄氏(武蔵野大学法学部特任教授)より、「超高齢社会における医療倫理と法」と題する特別講演が行われた。
 樋口氏は、アメリカの事例を交えて法と倫理の関係性を説明。特に高齢者医療においては、「自己決定権」が重要な要素であり、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を含めて、個人の「事前の決定」を法が支える体制を構築することが大切とした。