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勤務医の窓

最終段階を迎えたC型肝炎治療

府医ニュース

2018年9月19日 第2868号

 このたび箕面市立病院の田村信司先生からご推薦をいただき、平成30年6月から勤務医部会豊能ブロックの常任委員を拝命いたしました市立豊中病院の稲田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私は長らく、肝疾患を中心に消化器内科診療に従事してきました。この領域で一大課題であったC型肝炎治療が、この数年の間に大きく進歩し、今まさに最終段階を迎えようとしています。非A非B型肝炎と言われていた時代からこの疾患に携わってきた者にとっては、非常に感慨深い思いがあります。
 昭和63年にC型肝炎の診断が可能となり、平成4年からインターフェロン単独療法が始まりましたが、その治療成績は満足いくものではありませんでした。その後改良がなされ、16年からのペグインターフェロン・リバビリン併用療法が標準的治療として長らく行われ、当院でも多くの患者様に導入いたしました。しかし、日本人に多いゲノタイプ1型、高ウイルス量を有する難治性C型肝炎の患者様では、ウイルス排除率は50%程度にとどまり、よく知られているように副作用が多く、治療期間も1年から1年半と長く、患者様にとっては実に辛い治療でした。治療を勧める医師側にとっても、患者様と一緒にC型肝炎と闘うという心持ちとなり、この時期の患者様のことはその後も長く記憶に残っています。肝硬変、肝がんに進行し亡くなられる方も多くおられました。
 そのような折、26年のインターフェロンフリー治療の導入は、画期的な出来事となりました。飲み薬を24週服用するだけで、難治性の患者様でも90%の方でウイルス排除が得られ、また副作用も強くありませんでした。その後、数種の新薬が発売され、治療期間は12週と短縮され、適応患者様が拡大されたこともあり、多くのC型肝炎の患者様で治療が可能となりました。最も新しい薬剤では、すべてのゲノタイプの方に適応があり、最短8週の治療期間でウイルス排除率も100%近くと更に進歩を見せています。超高齢者や合併症のある方、人工透析をされている方などでも安全に治療ができ、受診されているほとんどの患者様が治療を受けられました。最後に残っていた非代償性C型肝硬変に対する新薬も、近いうちに認可され、まさにC型肝炎治療は最終段階を迎えることとなりました。
 しかし現実的な問題として、潜在的な患者様、すなわち感染に気付かれていない方や気付いていても受診されてない方が、まだ多数おられることも指摘されています。今後も保健行政機関や地域医療機関とよく協力し、肝炎検診や受診勧告システムを更に充実させていくことがより重要になってくると思われます。

市立豊中病院中央診療局長 稲田 正己 ――1279