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TPPと政治的無関心

府医ニュース

2018年6月27日 第2860号

 米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加11カ国の新協定「TPP11」は、このほど国会による承認が完了した。この国会承認に加え、農業支援や知的財産保護などの関連法案が成立すれば、我が国はTPP11を批准し、既に各国と合意した内容を実施する手はずにある。参加国のうち、6カ国で手続きが完了すれば、TPP11は発効される。また、TPP11のような国際統一ルールの制定だけではない。国内でも、高度プロフェッショナル制度(特定高度専門業務・成果型労働制)や水道民営化、PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)改正案など、よりグローバリズムに対応するかのごとく、わざわざ自ら環境づくりを行っている。
 6月1日の本会議で首相は「(TPP11によって)様々な商品をより安く手に入れることができるようになる」とその意義を訴えた。デフレ脱却を目指すと国民に言いながら、一方で(デフレである)物価が下がることを利点として挙げている。通常、認知的不協和(自身の行動や言葉に大きな矛盾を抱える時の不快感)に陥る場合、何らかの改善を試みようとするものだが、TPPに対してもデフレ対策に対しても、相変わらず両方推進しようとしている。私には理解できないが、この2つの政策は両立するのかもしれない。
 私が一番恐れていたことは、当初あれだけ反対意見も出ていたのに、国民の方も何も感じなくなってきていることである。歴史に学べば、先人達が必死で関税自主権を取り戻したのに、今、我々はこれを手放そうとしている。TPPも小さな政府政策も「時代の流れだから」と、したり顔で話す人は多い。しかし、実際は時代の趨勢でもなく、特殊な政治的イデオロギーの力が我々の生活を脅かしているのだ。このような政治的無関心こそ、未来の子ら、そして医療を殺すことになることを理解してほしい。(真)