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医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

規制緩和への隷従

府医ニュース

2018年4月25日 第2854号

 本年4月から遠隔診療に関して診療報酬化がなされた。私は昨年からこの件について本紙で警鐘を鳴らしてきた。先日、医師会の先輩医師から今回の診療報酬改定を指して「遠隔診療に反対するのは分かるが、規制緩和が進まなかったことは問題じゃないか」と苦言を呈された。また、あるSNSでは「岩盤規制によって自由な遠隔診療がほとんどできない状況になった」との医師の書き込みを見た。
 遠隔診療にも色々あるが、特に問題があるのは規制解釈の変更(緩和)の末に診療報酬化されたスマホ診療だ。これについては、宇沢弘文やカールポランニーを引用し「医師と患者の関係が、サービス提供者と消費者の関係に変容させられる」こと、更には、「内閣府のワーキンググループなどでは民間人を使って規制を緩和し、我々現場の意見が入りにくいよう展開している」ことの2点を強調してきた。
 規制緩和を医療分野に限らずポジティブワードとして認識してはいないか。一般的に社会的共通資本分野への「規制緩和」で金銭的な利益を得るのは、新規参入できる企業と、市場に参加できる資本家である。なのに「規制緩和」を日常生活における自由への扉と勘違いし、自ら不自由になってしまうことを民衆が選ぶのはなぜだろう。それは我々の知識不足だけではあるまい。過去の偉人は言う。「群衆の精神を常に支配しているのは、自由への欲求ではなくて屈従への欲求である。服従に対する渇望が、群衆を、その支配者と名乗る者へ本能的に屈服させたのである」(ル・ボン)。「本当を言えば、大衆は侮蔑されたがっている。支配されたがっている。獣達にとって、他に勝とうとする邪念ほど強いものはない。それなら、勝つ見込みがない者が、勝つ見込みのある者にどうして屈従し味方しない筈があるか。大衆は理論を好まぬ。自由はもっと嫌いだ」(小林秀雄)。このような大衆化、不自由への隷従心理が、社会的共通資本に従事する専門職、特に我々医師にまで及んでいないだろうか。私は憂慮している。(真)