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時の話題
府医ニュース
2021年3月17日 第2958号
厚生労働省は、1月18日の社会保障審議会介護給付費分科会において、令和3年度の介護報酬改定を諮問・答申した。
今回の改定は、新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中で、「感染症や災害への対応力強化」を図るとともに、団塊の世代のすべてが75歳以上となる2025年に向けて、2040年も見据えながら、▽地域包括ケアシステムの推進▽自立支援・重度化防止の取り組みの推進▽介護人材の確保・介護現場の革新▽制度の安定性・持続可能性の確保――を図るというものである。
改定率はプラス0.7%となった。そのうち新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価として0.05%が本年9月までの特例的な評価とされたため、本年4月の改定時から9月までの間は、すべてのサービスに対して、基本報酬に0.1%が上乗せされることとなった。
今回の新型コロナウイルス感染症は、当初は病院等の医療機関でのクラスターが全国各地から報告され、院内感染対策の強化が行われた。また、介護・障がい者施設においても、当初からクラスターへの懸念から面会、外出制限などの対策が行われてきた。
しかし、徐々に施設におけるクラスター報告が増加し、第3波以降は特に受け入れ医療機関が逼迫したこともあり、問題視されるようになった。感染経路不明者、若年層を中心とした無症候陽性者の増加などから、完全に感染を防御することは難しい。
特に介護・障がい者施設では、施設の構造、医療体制、感染防御の知識不足、入所者の状態、職員が入所者との身体接触が避けられないなどの多くの要因から、クラスターを起こしやすく、高齢者が多いため重症化しやすい。また、これらの施設では比較的若い職員が多く、外出・面会を禁止しても職員が無症候陽性者として感染源となり得る。更に認知症、知的障がいなどのために治療・検査・安静指示等に協力を得ることが難しく、特に介護の必要度が高い入所者は、受け入れ病院の確保が極めて困難である。
このような状況を鑑み、大阪府では早期に無症候性陽性者を発見するために3月末までの間、高齢者施設等従事者に対し、2週間に1度、無料でPCR検査を実施している。今回のパンデミック当初は、検査体制の不備などもあり、PCR検査は有症状者など限定的にしか行うことができなかった。
現在、検査体制が拡充されるとともに、感染対策として無症状者の把握が必要との認識の変化から、積極的にPCR検査が行われるようになった。クラスターが発生した病院・施設からは、感染症専門家の介入・助言が非常に有益であったとの意見を多く聞く。
今後、特に感染症専門の従事者がいない介護・障がい者施設においては、感染対策としてマニュアルの配布、座学での研修のみでなく、実地での研修・訓練がより有効であり、必要と考えられる。