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府医ニュース
2018年7月25日 第2863号
5月31日、医療従事者の需給に関する検討会の下に設置された医師需給分科会(以下、分科会)において「第3次中間取りまとめ」が公表された。平成28年6月の「第1次中間取りまとめ」では、地域医療構想を踏まえた全国レベルの医師需給推計を踏まえて、「新医師確保総合対策」および「緊急医師確保対策」に基づき20・21年度に開始され、29年度で終了する医学部定員の暫定増を当面延長する等の決定を行った。29年12月の「第2次中間取りまとめ」では、医師偏在対策に関して早急に対応する必要のある実効的な対策について、法改正が必要な事項を含めて取りまとめられた。
「第2次中間取りまとめ」を踏まえた「医療法及び医師法の一部を改正する法律案」が第196回国会に3月13日に提出され、5月18日に参議院で可決し、7月18日の衆議院本会議で可決、成立した。本法律案は、「地域間の医師偏在の解消等を通じ、地域における医療提供体制を確保するため、都道府県の医療計画における医師確保に関する事項の策定、臨床研修病院の指定権限および研修医定員の決定権限の都道府県への移譲等の措置を講ずる」などが趣旨である。更に地域ごとの医師偏在の度合いを示す医師偏在指標は、30年度をめどに示されることとなり、31年度中には、各都道府県において「医師少数区域(仮称)」等が設定されることになる。
今回の「第3次中間取りまとめ」では、①当面延長することとされた医学部定員増の取り扱い②これまで医学部定員の暫定増の効果、医師偏在対策の効果等について可能な限り早期に検証を行って結論を得ることとされた「経済財政改革の基本方針2009」および「新成長戦略」に基づく22年度から31年度までの医学部定員の暫定増の取り扱い――について、32年度以降の方針を示している。
医学部定員の暫定増については、30年度は1010人となり、現在、9419人に達している。20年度からの定員増で増員された医師が、28年度以降、臨床研修を終えることになっており、この増員分が、これまでの医師数の増分に上乗せされて増加していくことになる。医師の供給は、28年では31.5万人であるが、37年(2025年)には34.2万人、52年(2040年)には37.1万人と推計されている。一方、AI、IoT等を活用した効率化や、タスクシフティング等が進んだと見込み、時間外労働規制が月80時間相当に制限すれば40年(2028年)度頃、最も医師需給が大きくなる労働時間制限「週55時間」等にしたとしても45年(2033年)度頃に全国レベルで医師需給が均衡するとされている。
将来的には医療需要が減少局面となるなることが見込まれている。今後、医学部定員の減員に向けた議論が必要とされている。検討会では全国レベルのマクロの医師需給推計だけではなく、ミクロの領域における医師偏在対策や、将来の都道府県ごとの医師需給、診療科ごとの医師の必要数、長時間労働を行う医師の人数・割合の変化等についても適切に勘案した上で、人口構造の変化や医療技術の進展など医師を取り巻く環境がこれまでよりも短いスパンで変化していくことも踏まえ、定期的に検討していく必要があるとしている。