TPP〜安全対策は規制ではなく訴訟である〜

府医ニュース 201343 2672

 

数年前のこと。あるスーパーマーケットで、最も安価なのに、最も美味しそうな、鮮やかな深緑色と肉厚な葉をしたほうれん草を購入しました。「ソテーして食べよう」などと思いながら帰宅し、どういうわけか結局、キッチンの上に置き忘れたまま、眠ってしまいました。真夜中にふと目覚め、何気なくキッチンに入ると、ほうれん草がまるで、ある種の深海魚のように、ぼんやりと光を放っており、本当に驚きました。おそらく、「成長を促すために大量のリン酸を肥料として与えていたのではないか?」と推測しています。

 実は、このほうれん草は外国産だったのですが、その見事な外観は、隣に並べられた国産品を圧倒していたのでした。このことを思い出すにつけ、TPPの眼目でもある規制緩和、すなわち「我が国を、事前規制型の社会から事後調整型の社会に転換する」ことの危うさに思いを致さないわけにはゆきません。

 

 レッセフェールすなわち、規制をはずして好きなようにやらせる、そこで問題が生じれば、訴訟で決着をつけるというのです。米国の食品医薬品局(FDA)すら「廃止せよ」というのが市場原理主義者達の主張です。「安全かどうかは各自で判断すべきことで、その結果は自己責任だ」というものです。

 

 実際、米国は問題が発生した時の対処速度が非常に速いのは確かです。しかし「だったら最初から防ぐ手立て(規制)を確立していれば、労も少なくてよいのに」と日本人は考えます。医療や食の分野において安全性は二の次、収益性を高めるために、常に一定の被害者と訴訟発生を織り込むという発想は、そもそも論理的に破綻しているとはいえないでしょうか?(猫)




府医ニュース 2013515 2676

 

 米国通商代表部(USTR)は、「外国貿易障壁報告書」(National Trade Estimate Report on Foreign Trade Barriers)を毎年3月末にリリースしており、4月4日付で外務省も、日本に関する部分の日本語訳をネット上に公開している。読者諸賢にはぜひご一読賜りたいが、「よくも、ここまで他国の国柄を悪し様に否定できるものだ!」という内容だ。

 

 そもそも他国の「国柄(アイデンティティー)」の骨格ともいえる法律や制度を、尊重するどころか、「障壁」として「徹底排除すること」に、どのような正義があるのであろうか? 報告書では、執拗なまでに「透明性」が強調されるが、例えば、食品および栄養機能食品の成分開示要求の項では、「新開発食品および栄養機能食品について、成分と食品添加物の名称・割合・製造工程の表記を求めていることは負担が大きく、専有情報の競争相手への漏出の危険もある」と、一転して「不透明極まりない」要求となっているのだ。動植物検疫、税関といった「水際」での規制も、よりルーズな(つまり我が国にとっては危険な)ものにするよう求められており、民間保険市場の拡大、外国保険会社の現地法人化、(患者に、という建前ではあるが)診療記録へのアクセス拡大を可能とする医療IT化、知財権保護の尋常ならざる強化、企業に有利な医療機器・医薬品償還価格政策の推進やプライバシーガイドラインに至るまで、これらが一体となって、巨大マネーが動く医療マーケットを創出しようとしている。だがしかし、これは同時に我が国には、環境衛生の劣化とともに、国民の健康や医療水準の低下ないし格差の増大をもたらす過酷な内容である。

 

 思い浮かぶのは、宇野忠義氏(弘前大学農学生命科学部)著「リンゴ農家の経営危機とリンゴ火傷病の検疫問題――WTO体制下の構造問題に迫る」の表紙にある2枚の写真である。1枚は火傷病で全滅し、墓場と化した米国の果樹園の惨状、もう1枚は、我が国の完成された美しい果樹園の佇まいである。背景に金泥を刷けば、そのまま琳派の屏風絵になりそうな美しさは、まさに我が国の国柄であるとさえ思う。

 

 手入れされた土地に育まれた健やかで美味しい果実、美しい景観とそれに涵養される人心、そして何より国土を、安全かつ豊かな状態で次代へと伝え、贈り続ける、その象徴のように思えるのだ。私達は、「どのような国に住みたいか」「どのような国柄を選びたいか」ということをより広く、高い視点から考える必要があり、「混合診療」や「皆保険制度」についても、そのような立場から考えなければならないと思う。(猫)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp20130404.pdf




TPP、そして医療における最大のステークホルダーは「国民」である〜

府医ニュース 2013612日 第2679

 

 昨年秋、社会保障制度改革国民会議の委員の人選において、「利害関係者を排除する」という理由から、現実に実地医療を担う医療従事者を代表する三師会からの委員参加は認められなかった。代わりに委員として名を連ねたのは、商学・経済学の専門家達であり、実に委員数の3分の2を占める。

 

 あらゆる分野で複雑化した現代社会において、全てのステークホルダー(利害関係者)の利害を調整することには非常な困難があるだろう。しかし、医療従事者は(株主とは異質の)、患者と不即不離の、生々しい最大の関係者であり、その参加を排除するのは「狂気の沙汰」である。

 

 さて、先月15日から10日間にわたって、ペルーのリマで開催された「第17回TPP交渉会合の概要」を、内閣官房が5月27日付で発表している。TPP交渉会合には毎回、ステークホルダーとして、大企業が多数登録参加しており、今回も300名以上のステークホルダーが参加し、50以上のプレゼンテーションが行われ、非公式の会合も多々あったとのことだ。

 

 この「概要」を読むと、来月7月15日からマレーシアで開催される次回交渉会合で、我が国が正式参加することが織り込まれている。そして国民という最大のステークホルダーが疎外されたまま、同月中に参院選を迎える。内閣官房のサイトを見ると、ゆったりと澱んでいた流れが次第に加速され、TPPという「瀑布」へと吸い込まれてゆくのが見えるようだ。

 

 世界的に、多国籍企業の租税回避が、国家運営を脅かす病となっていることも広く知られ始めた現在、国民の健康・国民の医療を護るために、医師会は「国家の民営化・市場化」に強い警告を発し続ける必要がある。(猫)

 

「第17回交渉会合の概要」資料:
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp_17_130527.pdf

 

 

コーポラティズムによるTPP

府医ニュース 2013828 2686

 

8月18日、マイケル・フロマン米通商代表が訪日し、2日間にわたり我が国の閣僚との会談を行うや、20日未明、我が国のTPP交渉団はブルネイに向けて出発した。勿論、8月22日から開かれるTPP第19回目の会合出席の為である。 

 

フロマン氏は、巨大金融コングロマリットのシティ・グループの取締役兼、生命保険・年金事業大手企業であるシティ・インシュアランス・インターナショナル・ホールディングス・インクの社長から、いわゆる「回転ドア人事」で米通商代表に転じた人であり、コーポラティズムの権化とも云える人だ。タフ・ネゴシエーターの異名をとり、司令塔として韓米FTAを締結後、返す刀でTPPを牽引し、ネガティヴ・リスト(例外設定)を認めない姿勢を明らかにしてきた。 

 

TPP交渉のテーマは、いつも「物品市場アクセス」や「関税撤廃」として、手続きの簡素化といった性質のものとして報道される。しかし私達は、TPPの本質とは、国家を解体し、貧富・格差を極大化し、その落差によって利潤を生みだす「国民・国家の収益装置化」であることを見誤ってはならない。巨大資本による、国柄や国内法といった「非関税障壁と称されるもの」の排除、そして「知財権」の尋常ならざる拡大が、矛と盾に相当する武器だ。1948年に発足したGATT、それを95年に引き継ぐ形で発足したWTO、半世紀以上に及ぶ自由化の集大成がTPPである。(猫)




映画作品に垣間見る「TPPの世界」(1)

府医ニュース 2013925 2689

 

映画『シッコ SiCKO』(2007年公開)は、市場経済原理主義が席巻する米国医療制度の非倫理的実態を世界に知らしめた作品でした。一方、『ディボース・ショウ』(原題: Intolerable Cruelty)は、コーエン兄弟が03年に製作した、プリナップ(婚前契約書)を軸に物語が進行するラブ・コメディです。因みにプリナップとは、資産家が「離婚した際の資産防衛」の為に作られ、離婚慰謝料が際限なく高額化した訴訟大国「米国」ならではの方途と言えます。

 

 ジョージ・クルーニー演じる離婚訴訟専門の辣腕弁護士(マイルス)が、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ演じる悪女(マリリン)に財産をむしり取られてしまうや、上役の弁護士は正に「地獄の亡者」のような出で立ちで、「捨てられた!?女々しいことを! 男らしく対処しろ! 君は人生を分かったつもりでおったんだろ? 『信頼』『結婚』そして『愛』!『愛がすべてだ』とな!よく聞け! もう一度、法というものを教えてやる。我々の務めは法に仕え、法を尊ぶことだ。そして、そして、時には法に従うだが、今は、そういう時ではない!」(戸田奈津子訳)と、マリリン殺害をマイルスに命じ、殺し屋を斡旋します。マリリンへの未練を断ち難いまま、マイルスは「彼女は、彼女は苦しまないだろうね?」と殺し屋に問い、「それは料金次第だ」と即座に返されます。

 

映画の主題ではないものの、富裕層の狭間を、したたかに生き延びる貧困層が、汚い仕事を実際に請け負う私立探偵や殺し屋として、セレブな主人公達に対置されています。私立探偵は、証拠として収集した盗撮ビデオを、ジャンク・フード片手に仲間と楽しんで憂さを晴らし、よれよれのスウェットを着た殺し屋は喘息持ち、wheezy Joe(喘鳴のジョー)と仇名され、握りしめた気管支拡張剤の吸入器をひっきりなしに吸い、眼は虚ろ、つまり、安全かつ妥当な喘息治療を受けていないことが窺われます。

 

この映画はハッピーエンドのコメディでありながら、それに止まらず、「男らしさ」「法令遵守」といったキーワードをもって、巧みに米国の非倫理的実情を描いています。名画の中には、実に考えるヒントが多いと思います。(猫)




映画作品に垣間見る「TPPの世界」(2)

府医ニュース 20131030 2692

 

「赤ちゃん泥棒」と3ストライク法

 「赤ちゃん泥棒」(原題:Raising Arizona)も、コーエン兄弟が1987年に発表した作品です。主人公のコンビニ専門の泥棒常習犯ハイ・マクダノー(ニコラス・ケイジ)には、孤独な生い立ちが窺われます。『(刑務所の)中の生活は規則ずくめで面白くないが、仲間には同志的愛情がある。まあ、戦友みたいなもんだ。苦労を分かち合うからね』(岡枝慎二訳)。しかし、出所しても、すぐに刑務所に戻らざるを得ません。『更生したかったが、レーガンの経済政策が悪くて、いや、彼は評判のいい人だから、悪いのは顧問達なんだろう』と、更生しようにも前科者が職を得ることは困難を極め、生きるために再犯せざるを得なくなります。そんな主人公は、刑務所内で接した婦人警官エド(ホリー・ハンター)に一目惚れし、やがてトレーラーハウスでの新婚生活が始まります。夫婦と生まれてくる子供との、小さいが温かい家族を夢見て

 

エドが不妊症であることが判り、表題のコメディが急展開するのですが、あらすじはさて置き、この作品は、アメリカの州法である3ストライク法(1994年)以前の作品であるにもかかわらず、期せずして私達に同法成立以降のアメリカの労働市場の一面を暗示するものとなっています。3ストライク法とは「犯罪者が3度目の有罪判決を受けた場合、最後に犯した罪の重さに関係なく自動的に終身刑にする」という法律です。19世紀までアメリカ国内では民営刑務所が普及していましたが、劣悪な環境下で囚人達を奴隷のように酷使していたことから、禁止する州が増え、19世紀末にはほぼ消失したそうです。しかし、ほぼ1世紀後、「小さな政府」を目指すアメリカでは、刑務所の「民営化」が推し進められ、1990年の5カ所から2000年には100カ所以上となり、収監者数は増え続けているといいます。

 

つまり「第三世界以下の低価格での国内アウトソーシング先」は、巨大な労働市場と化し、恰好の投資対象と見做され、刑務所債はローリスク・ハイリターンの優良債券としての地位を確立しているとのことでした。正規・非正規労働者ですらない、最低賃金はおろか、労働法も埒外の、アメリカの囚人労働者の有様は、TPPによる「ヒト、モノ、金」の自由化の行き着く非倫理・非人間的世界が我が国でも正に現実のものとなろうとしていることを示していると思われます。(猫)




薬価暴騰(TPP後の医療)

府医ニュース 20131225 2698

 

てんかん患者に処方されていたゾニサミドが偶然、合併症のパーキンソン病にも著効を示したことから、ゾニサミドの治験が開始された。治験の結果、パーキンソン病に対しては少量の2550r/日で有効なことが判り、対照薬に対し有意差が明確に出たため、有用性加算をも付加された全く別の新薬(いわゆるピカ新)として薬価収載された。オーファン・ドラッグとして新薬創出加算も加わり、薬価は高薬価のまま維持される

 

 治療薬として「古い歴史」を有する薬剤が、「奇妙なルール」によってロンダリングされ、別の薬として生まれ変わった瞬間である。抗てんかん薬「エクセグラン100r錠」が1錠3360銭であるのに対して、抗パーキンソン病治療薬「トレリーフ25r錠」は1錠1084円90銭、実に薬価は130倍に跳ね上がっている。全く同一のゾニサミドが、である。

 

 当筆が以前、話題提起したメソトレキセートは適応症の追加で、約10倍の薬価がつけられたが、それどころではない異常な薬価決定である。こういった例は、レナデックス錠やサレドカプセル等、枚挙にいとまがない。

 果たして、この薬価決定ルールに「正義」はあるのだろうか?

 思うに、我が国の国民皆保険制度はWTO加盟以降、知的財産権に関わる米国流ルールの攻撃を受け続け、苛まれ続けてきた。

 

 国民医療費の増大に対する説明として「高度先進医療」「少子高齢化」といったクリシェが浸透し切っている上に、「TPP批准発効後、薬の値段は上がるのか、下がるのか?」という至極まともな問い自体が秘されていることは異常な事態である。

 

 全く同一物質でないとしても、既存の薬剤の「効能とは無関係な部分」を少しだけ変えて(例えば、側鎖の炭素を窒素に置換して)、「10倍返し」「100倍返し」のピカ新に生まれ変わらせる。こういった錬金術的手法が繰り返され、薬価は暴騰することをとどまらなくなるだろう。

 

 サンデル教授は「正義論」において、結論は出していない。ひたすら「正義について考え続ける」ことを通じてのみ、我々は正義に近付くとされる。薬価の暴騰は、良質な医療を国民から遠ざけてしまう。良質な医療を国民の傍らにあらしめること、それを私達は考え続けなければならない。(猫)




映画作品に垣間見る「TPPの世界」(3)

府医ニュース 2014219 2703

 

〜「エリジウム」と医療〜

 表題は昨夏、封切られた、ニール・ブロムカンプ監督の「第9地区」に続く2作目の映画です。舞台は市場経済原理主義が覇権を握って久しい2154年。到達地点としての「格差社会の究極の姿」が描かれることから始まります。環境汚染や人口爆発により地球全体がスラム化し、貧困、病苦、犯罪といった厄災の「るつぼ」と化した地上世界を嫌い、超富裕層のみが理想郷を目指し、アーマダイン社製スペースコロニー「エリジウム」に移住します。

 清浄かつ安全な環境、ビヴァリーヒルズを思わせる豪奢な住宅街。特筆すべきは、あらゆる病も治してしまう「医療ポッド3000」です。システムキッチンのように1軒に1台、このマシンが標準装備されており、タンニングマシンのようなポッドに横たわるだけで、瞬時に、あらゆる疾病を診断し、前処置すらなく非侵襲的に治療してしまいます。一方、地上の病院では、医療資源の乏しさから、治せるものも治せない惨状に絶望した医師が、必死な面持ちの病児の母親を、「ここはエリジウムではないんだよ」と諭すシーンがあり、現実にその場に立ち会っているかの如くに、胸が痛みました。

 「エリジウム」を運営するのは、旧国連事務総長のパテル総裁と、アーマダイン社役員を兼ねるデラコート防衛省長官(ジョディ・フォスター)。デラコート長官は、地上からの貧しい不法移民をミサイルで迎撃し、アンドロイドに捕獲させ、殺すことを躊躇しません。地上のアーマダイン社での過酷な労働条件は、堤未果氏が「貧困大国アメリカ」シリーズでレポートした「民営刑務所」での苦役を彷彿とさせます

 あらすじを書いてしまうと勿体ないので、ここまでに致しますが、「SiCKO」がドキュメンタリー映画であったのに対し、こちらは、2154年の近未来を舞台とするSF映画ですが、これからの社会の変容、とりわけ医療のそれを考える上で示唆多い映画です。

 映画のオマケとして、ネット上にはアーマダイン社、エリジウム不動産、民間協力局(セキュリティ)のオフィシャル・サイトがアップされており、映画の世界観を知る、格好の資料になっています。お暇な折にでも是非、ご覧ください。(猫)

アーマダイン社−人類を未来へ導くhttp://bd-dvd.sonypictures.jp/elysium-movie/armadyne/

エリジウム不動産−最高の暮らし、2億5千万ドルから地球にはない理想郷での暮らしをあなたにhttp://bd-dvd.sonypictures.jp/elysium-movie/tourism/

民間協力局−私たちはエリジウムの安全を確保していますhttp://bd-dvd.sonypictures.jp/elysium-movie/civilcooperationbureau/




TPP下で「観光立国」を目指すという矛盾

府医ニュース 2014319 2706

グローバル化を唱える一方で、観光立国の推進を、政府が主張し始めた時、何とも奇妙な気分になりました。この「猫の額の様に小さな島国」で観光立国を持続可能な産業とする国内資源とは、個性的な文化や習慣が、生き生きと息づいていることであり、(善悪は別として)保護主義や所謂「非関税障壁」によって強固に守られたものほどより魅力的な(従って高価値の)資源となるのは明らかだからです。

 学会出張で地方に出向いた時、「ご当地名物」を楽しみに駅の改札口を出たところで何のことはない、自分の居住地の駅前風景と寸分違わぬことに何度も落胆しました。全国的なチェーン展開をしている居酒屋や物販店は、どの駅前にも店舗を連ねており、その土地土地の「お国柄」を限りなく駆逐してしまいました。

 観光立国としての魅力を維持するには、(大阪府や大阪市では冗費と切り捨てられましたが)伝統文化の保護や後継者の育成に十分な予算を割き、かつ一層「排他的」になる必要すら、あります。でないと、安易な「コラボ」、新奇性のみを追求したクロスオーバーやフュージョンが施され、その資源はどんどん摩耗していってしまいます。この矛盾に政治家が誰も気付かないのが不思議でなりません。

 観光立国にとっての目玉商品とは「お・も・て・な・し」などでは決してなく、むしろ、シルクロードの端っこにある小さな島国が、長期間の鎖国政策や、ガラパゴス化によって、特異な文化や社会を造ったということが最大の目玉商品なのではないでしょうか?

 「非関税障壁の排除」(TPP)は、やがては「日本語」すらも非関税障壁として、排除の対象足り得ます。また、不況の長期化で治安が悪くなったとして、今度は「銃輸入自由化」といった話になりかねないという危惧は決して異常なものではなく、それらは観光立国にはそぐわないものでしょう。返す返すも、この矛盾に言及する政治家が皆無なのが、私は不思議でなりません。(猫)




「師」労働考

府医ニュース 2014430 2710

 

関東の50代の女性高校教諭が、校長に相談後、子息の通う別の高校の入学式に出席するため、 担任を務める1年生の入学式を欠席したことが、「教え子より息子の入学式が大切なのか?」と激しい批判の的となった。

 

 さて「教師」は医師同様、社会的共通資本を担い、勤務時間管理の困難な仕事であり、超過勤務を単純に測定することも難しい業種である。「その使命と重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられる」とされてきたが、実際はどうであろうか。かの「三位一体の改革」以降、公務員(教職員)給与は削減され続け、非正規教員の増加を見るに至った。「正規の教員採用選考を経ず、体系的な研修を受けていない非正規教員の割合が過度に大きくなることは、学校運営面や教育内容の質の維持・向上の面で問題である」と、文部科学省が表明するまでになっているそうだ。

 しかし、多くの国民が、このような実情を知らずに、「聖職者たり得ない」教師を非難し続ける

 

 現在、高校進学率は98%を超える。「非難すればするほど、物事が好転する」のなら良いのだが、実際には学校現場を疲弊させ、有為な人材を失い、さらに劣化させてしまう。これは「TPP」と「選択療養」の登場で国民皆保険制度崩壊の危機にある医療の世界と同根の「病」だと言えまいか。(猫)




再び! TPP下における「薬剤の適応症追加」について

府医ニュース 2014528 2713

 

オーファン・ドラッグ(希少疾病用医薬品:対象患者が5万人以下で、難病が多い)であり、降圧薬や高脂血症治療薬などに比べれば「処方量は少ない」が、それでも異常な高価格であり、「一物多価」という矛盾に加え、(不幸にも)有意差をつけられてしまった対照薬の薬価を防衛するといった側面も併せ持っており、いずれにせよ「公的国民皆保険制度」という、我が国の社会保障制度・倫理とは相容れないものであることは間違いない。

 

 さて、脳梗塞予防薬として広く用いられている抗血小板薬「シロスタゾール」は1988年に薬価収載されて以降、「脳梗塞発症後の再発抑制」を目的に広く処方されてきた薬剤である。近年、この薬剤がアルツハイマー型認知症の進行予防薬として期待されるに至り、今秋より、軽度認知障害患者を対象とした治験が開始されるようだ。

 

 我が国では、超高齢化社会の到来に伴い、団塊の世代が70歳代になる2020年には認知症の患者数は300万人を超えると予想される。近い将来、膨大な量のシロスタゾールが処方されるようになるのは間違いないだろう。

 

 しかし、TPPにおける知財権保護のルール下、「アルツハイマー型認知症」の適応をとった時点で、シロスタゾールの薬価が一体、どれくらいのものになるか想像していただきたい。製薬会社のはじく算盤の音は、また、我が国の医療への「挽歌」でもあるのだ。(猫)