平成16年度第1回医療問題研究委員会「混合診療の問題点について」大阪府医師会 難波俊司副会長講演
混合診療について (2/3)
 
混合診療に対する見解
 
(注16) 混合診療容認論の立場
 
●規制緩和の一環としての消費者の選択の拡大
●医療費(保健給付費)抑制を目的とした公費支出の抑制
●日本で認可されていない技術や医薬品の使用
ただ、我々医師の中にも混合診療に賛成する立場の方が多いのです。殊に病院関係の方々、しかも先端医療に携わっておられる先生方に非常に多いということです。その理由ですが、1番目は、規制緩和の一環として、消費者の選択の拡大を図るということです。2番目に、医療費の抑制を目的とした公費支出の抑制です。要するに患者さんのポケットからたくさんお金が出ていくから、国が出す分が減っていくでしょうということです。3番目は、日本では許可されていない技術や医薬品の使用が出来るということです(注16)。
混合診療を禁止する法的な根拠はありませんが、保険医療機関及び保険医療養担当規則第5条に一部負担金の受領規定があり、「一部負担金は必ず徴収しなければならない、それ以外は徴収してはいけない」とあります。第18条には、「特殊療法または新しい療法等、厚生労働大臣が定めるもの以外は保険診療で行ってはならない」とあります。また、第19条の使用医薬品の規定には、「厚労大臣が定めるもの以外の薬物を施用または処方してはならない」とあります。一方、愛知県の病院協会が調査をしたところ、勤務医の約8割が混合診療に賛成しているという結果が出ました。中には、その是非は我々医療提供者ではなく患者さんが決めるべきだという意見もあります。
 
公的保険と私的保険
 
(注17) 混合診療の影響
 
●患者さんも医師も技術進歩と高い医療の質を求める
●医療提供コストは増大し保険外診療の費用は増加する
●患者さんは私的保険を通じた保障を求めるようになる
もし、混合診療を導入すれば、患者さんも医師も技術進歩と高い医療の質を求めます。医療提供コストは増大し保険外診療の費用が増加します。そして患者さんは私的保険を通じた保障を求めるようになります。つまり、保険外診療は保険のように3割負担したらいいというものではなく、10割負担しなければなりませんので、患者さんは私的保険を通じた保障を求めるようになるということです(注17)。
(注18) 私的保険
 
●営利を目的とした私的保険では
・疾病に罹患している者や疾病に高いリスクを持つ者に対して加入制限を厳しくするか、高い保険料を課す可能性が高い
・真に医療を必要とする状態にある者が保険に加入しにくい状態におかれる
・私的保険は公的保険の代替えとはなりえない
営利を目的とした私的保険では、疾病に罹患している者や疾病に高いリスクを持つ者に対しては加入制限を厳しくするか、高い保険料を課すはずです。自動車保険と同じ話です。ということは、真に医療を必要とする状態にある者が保険に加入しにくい状態に置かれてしまいます。したがって私的保険は公的保険の代替とはなり得ないということが言えます(注18)。
(注19) 米国と日本
 
●米国の医療費はGDP比で日本の2倍
●米国は私的保険が医療の内容を決める
●米国は患者の権利法が必要な状態
●米国では4000万人が無保険
健康寿命ははるかに日本が優れている
規制改革・民間開放推進会議のメンバーの中には、アメリカのまねをしたいという人が多いわけです。しかし、アメリカの医療費はGDP比で日本の2倍です。「ER」というアメリカのドラマがありますが、救急の患者が来たとき、ドクターは必ず保険会社に電話をかけて、その治療をしていいかを確認します。アメリカでは、必要な医療を当然のように受けることが出来ないということで、患者の権利法をつくる運動が起こっています。現実に、4千万人が無保険です。貧困層は国の保険に加入し、裕福層はHMO等の私的保険に入っていますが、真ん中の層がどこにも加入していないのです。健康寿命を始めとする健康指標は、すべて日本の方が高いという状況です(注19)。
(注20) 新薬(新しい抗がん剤等)
 
●安全で有効なことが客観的に証明されるならば速やかに保険適用にすべき
●保険適用するためのルールこそ規制緩和すべきである
●健康保険の適用の判断基準を明確にして審議や結果をオープンにすることが必要
抗がん剤等の新しい薬は、安全で有効なことが客観的に証明されるならば速やかに保険適用されるべきで、この保険適用のルールこそ規制緩和すべきであると考えます。これをせずに混合診療を行うべきではありません。健康保険適用の判断基準を明確にして、審議の内容や結果をオープンにすることが必要です。薬事審議会での論議はどうも不透明です(注20)。
 
高度先進医療について
(注21) 高度先進医療
 
●特定療養費として健康保険制度の適用がある
●高度先進医療は安全性が確立されているが、一般に普及されていないもので、健康保険に導入されるまでの間を特定療養費とする
高度先進医療も特定療養費として健康保険制度の適用があります。特定療養費の部分は現金で払い、あとは保険で支払います。安全性は確立されているけれども一般に普及されていないもので、健康保険に導入されるまでの間を特定療養費とすることとなっています。その後、健康保険適用されたものは非常にたくさんあります。例えば、ある機器が特定の場所にしかない場合は健康保険制度にはなじみませんが、皆が平等にそれを受けられるくらいに普及し、しかもその安全性と有効性が確立された場合には保険適用されます。ところが、自費診療、混合診療が行われてしまうと、いつまでも健康保険に適用されないということになりかねません(注21)。
(注22) 高度先進医療
 
●健康保険で多くの人が受けられるようになれば数のメリットで費用は安くなる
●有効性が確立したら速やかに一般の治療と同じように通常の健康保険と同様に扱われるべき
●高度先進医療の認定も速やかにすべき
健康保険で多くの人がある治療を受けられるようになれば、数のメリットで費用は安くなりますし、有効性が確立したら速やかに一般の治療と同じように通常の健康保険と同様に扱われるべきです。したがって、高度先進医療の認定も出来るだけ速やかにしなければなりません(注22)。
 
混合診療の問題点
(注23) 混合診療の問題点
 
●財政難を理由に最新の医療が健康保険に導入されなくなり、費用を負担できる人しか必要な医療が受けられなくなる
●費用を負担できる人と出来ない人の間に不公平が生じる 命は平等
●医学・医療の進歩の享受は国民皆保険によって国民全員が受けるべき
(注24) 混合診療の解禁
 
(注25) 混合診療の解禁とその先にあるもの
 
(注26) 混合診療の解禁
 
混合診療の問題点は非常にたくさんあります。財政難を理由に最新の医療が健康保険に導入されなくなり、費用を負担出来る人しか必要な医療が受けられなくなります。しかし、命は平等です。医学・医療の進歩の恩恵は国民皆保険制度によって国民全員が享受するべきです(注23)。
注24は規制改革・民間開放推進会議の官製市場民間開放委員会が作成した資料ですが、非常に重大なことが書いてあります。現行制度と混合診療解禁後の保険診療と保険外(自由)診療の混合診療について図に示していますが、明らかに公的保険診療を縮小するということを表現しています。
また、注25においても混合診療解禁後の保険診療分は小さく書かれています。更に将来は、いわゆる軽症医療はセルフメディケーションで行う、つまり自由診療で自己負担しなさいということを示し、保険診療はますます小さく表されています。
混合診療を解禁すれば国民全体が新しい医療の恩恵を本当に享受出来るのでしょうか。日医はノーと言っています。現在ですと、新しい医療の開発や研究の結果、それが有効で安全なものであれば、まず特定療養費となります。そして、それが一般化することによって保険適用され、国民全員に広く利益を与えることが出来ます。ところが、混合診療を解禁しますと、株式会社の経営する病院は利益を株主に還元しないといけませんので、利益を出そうとします。そうすると、新しい医療は高額の医療費負担が可能な者しか受けることが出来ないことになります。お金の有る無しで受けられる医療の質及び量が変わってくるということです(注26)
 
医師会は混合診療に反対
幸福な国家とは、自由で安心の出来る国です。現在の日本の幸福な国家を壊さないためにも、日医は混合診療に反対しておりますし、日医を支える府医も反対しています。